プロローグ 始業
六月。梅雨に入り、雨のせいか依頼してくる人もいなくなりフォニックス達は家の中で退屈そうにしていた。
「コウ、手伝うぞ?」
そんな中一人で忙しそうにしているコウを見てライトはそう言うが、
「いや、大丈夫だ。お前らがやったら余計に時間かかるし」
と断られてしまった。しかし、そんな鬱屈とした雰囲気を打ち破るような一通の手紙が来た。
「おいお前ら!筆記用具とノート持って出かけるぞ!」
とフウワが大声で言うと、全員が首を傾げた。
「なんで筆記用具とノートなんだ?」
「私も知らん。ただ、これに持って来いと書いてあったというだけだ」
フウワは手紙を見せる。そこには、
『フォニックス様へ
お忙しい中、こちらの都合を押し付けてしまうことをご了承下さい。
本日、戦いに関する授業を実施します。筆記用具やノートを持参して頂けるとありがたいです。
ギーヨ』
と活字で書いてあった。一同は目を丸くした。
「戦いに関する授業ってなんだ?俺勉強は嫌いなんだが」
エントは不満そうだったが、他のメンバーは既に筆記用具やノートを探し始めていた。ソウマはすぐに出して来た。
「ソウマ!それ幾つある?」
ライトが聞くと、ソウマは自室から鉛筆や消しゴム、ノートを大量に出して来る。
「なんでそんな持ってんだ?」
「この鉛筆、もうすっごく短いけどなんかもったいなくて鉛筆ホルダーに入れて使ってるんだよね。だけどたまにそれを忘れて買って来ちゃったり」
「そもそも使う機会なんてあるか?」
「毎日日記を書いてるんだよ」
ソウマは話しながら皆にそれらを配っていく。
「よし、準備も出来た事だし行くか!」
ライトの言葉を皮切りに出発しようとしたが、ギルドがいないことに気づく。
「……歩いて行くか」
結局、大急ぎで走って行ったのだった。猫の国の宮殿に辿り着くと、一人の男が出迎えてくれた。
「あの国王の我儘を聞いて下さり本当にありがとうございます!僕は王の側近、キョウです!ご案内致します!」
勢いのあるキョウに若干気圧されながら、一同はそのまま宮殿に入り、豪華な装飾を眺めながら一つの部屋に着いた。
「こちらが会場です!」
キョウがドアを開けると、そこは本当に教室のような所だった。机は広々としているが。そして、教卓にはギーヨがいた。
「どうぞお掛け下さい」
「ええええ!?」
驚く一同を他所にギーヨは黒板にチョークで字を書き始めた。一同は慌てて座り、ノートに書き写す。ギーヨによる戦いの座学の始まりである。
キャラクター命名⑯ キョウ
キョウは一番そのままです。
「鏡」
次回は設定の方です。