第四部 怖い二人
翌日。心地よい小鳥達の囀りの聞こえる朝……だったが、フウワの怒鳴り声によりかき消され、逃げてしまった。
「何やってんだ!こんなボロボロになってまで倒すような相手じゃなかっただろ!それに、私たちだってノーダメージだった!もっと頼れよ!」
すごい剣幕でソウマを怒鳴り続けるフウワをスインが必死に宥める。
「ソウマ君が心配な気持ちは分かるけど、一旦落ち着かな。ソウマ君も十分反省しとるやろ」
一方、当の本人であるソウマは真面目な顔で俯いていた。
「……スインさん、庇ってくれてありがとう。でも、これは僕の早とちりのせいだから。言い訳をするつもりはないよ。フウワさんにも、他の人にも迷惑かけたし、自己犠牲をしなくても勝てる相手だと分かってた」
ソウマは顔を上げてフウワと目を合わせた。
「でも、あのまま長期戦になってみんなを守り切れる自信がなかった。結局は、誰かが傷つく所を見たくなかった僕の弱さだ。フウワさん、一つだけ約束するよ」
フウワは眉間の皺をなくした。
「これから、みんなを守るために前に出ることはあると思う。でも、今回みたいに自分からダメージを受けに行くようなことはしないよ」
「……本当に実行できるんだろうな」
「信頼はしてもらおうと思ってないよ。……じゃあ、次僕が自爆を使って倒れたら、本気で殴ってくれていいから」
フウワはそれを聞くと口角を上げた。
「言ったな?私の本気の殴りで骨が折れても知らないからな?」
「自爆してる時点で死は覚悟してるから大丈夫だよ」
その言葉に、フウワは呆れる。
「……もっと自分を大切にしろよ。あと死ぬようなことをこんな所でするな。あいつらのことだから、絶対責任感じるぞ」
ソウマはフウワをよりしっかりと見据えた。
「だよね。少なくともあの子達には、悲しい思いをして欲しくない」
「いやお前ライトとエントと同い年だろ?『あの子』って……」
「雰囲気だよ」
そう言って二人は笑い合った。それを見たスインは
(一時期はどうなるか心配やってけど、仲直りできたみたいでよかったわ)
と思った。
一方、ライトとエントはギーヨからの報酬を見て大喜びしていた。
「これくらいあったら、当分は食って行けるな!」
ライトがそう言うと、エントもニコニコ顔で頷いた。しかし。
「まぁ所得税で引かれる分はありますが」
と言いながらギルドが現れると、二人は硬直した。
「という訳で、これくらいは持っていきますね」
「「頼むからやめて下さい!」」
二人の願いも虚しくギルドは去って行った。
キャラクター設定④ アイン
アインはスインにベッタリな妹……にするつもりが、どんどんキャラが立って行きました。
気づけば、フォニックスのメンバーの中で一番冷静な人になっていたように思います。
次回は今回もガッツリ出て来た人です。