第三部 夜の風
多少時間はかかったものの、皆は無事に集まる事が出来た。エヴェルは穏やかな顔で倒れていたが、死んではいなかった。ムルルは静かにエヴェルに近づき、スノードロップの花を手に握らせた。
「死んでる人みたいになるかな」
とムルルは微笑んだが、その目には涙が溜まっていた。ムルルはエヴェルの側に座り、顔を足に埋めた。
「……ムルル。ここにいるか?」
とライトが尋ねると、ムルルはコクリと頷いた。皆は何も言わずにフォニックスの本拠地へと戻った。
本拠地に戻ると、イネイ、コウ、ヒノガ、そしてギルドがいた。勝手に抜け出したツーハや危険な事をしたメンバーは大目玉をくらい、落ち込んだが、それ以外はコウを手伝った。その中で、フウワはコウと話した。
「ソウマは大丈夫そうか?」
「あー。ちょっと入院だって言ってた。こっちの病院に移動させてくれるみたいだ」
「……だと思った」
「……もう誰にも止めれそうにないというか……なんと言うか……」
二人は頷き合った。
一方、ヒノガはパキラに説教をされていた。
「もう!立派に父親なんだからちゃんとわきまえてよね!どーせ、あれ、使ったんでしょ?」
「仕方がないだろう。そもそも、俺以外全く対応出来てないのが問だ」
ヒノガの頬をパキラが掴んで引き伸ばした。
「ひゃへろ」
「もうっ!このままほっぺたが伸びちゃえ!」
「はんへほんはひほほっへふんは」
「えっ?」
パキラは手を離した。
「何でそんなに怒ってるんだ。別に良いだろう。あの技を使って死ぬ訳でもない」
「でも、怪我だけでも私は嫌なの!」
パキラは去って行った。
その後は、祝勝会と称して大宴会が開かれた。ツーハなど健康第一な者は寝に行き、浮かれているものは大騒ぎをした。料理を出すコウと、潰れた者をベッドに運びに行くフウワはとにかく忙しかった。
「イネイ、大丈夫か?」
フウワは飲み物を担当していたイネイに尋ねた。
「大丈夫です!慣れてますので!ただ、ご一緒は出来ませんが……」
イネイはまだ十九である。
「私が代わるよ!」
パキラがイネイと交代し、イネイはしばし食事を堪能していたが、徐に立ち上がったライトを見つけた。
「どうしたんですか?」
「ちょっと、風に当たって来ようかなって」
「それなら、私も」
二人きりで外に出ると、外は驚く程静まり返っていた。
「ふぅ。ちょっと飛ばし過ぎた」
「大丈夫ですか?」
「吐くほどじゃない」
ライトはただ星空を見上げた。イネイもそうした。
「見ろ、綺麗な月だ」




