第二部 全員の力を
フウワはテールハンドを出せないので左腕で防ごうとしたが、エヴェルは百鬼夜行を出してきた。百鬼夜行は爆発して土埃が舞ったが、土埃の中から上空へと突き抜けていく人影があった。フウワは誰かに肩を掴まれ、浮いていた。
「ツーハ!?」
「せーぎのみかた、さんじょう!」
ツーハはスインの近くで降りた。スインはフウワから矢を受け取ると、水を弓の形に固め、矢を放つ準備を始めた。しかし、エヴェルは高速で動いていた。
「くっ……」
ライトはエヴェルの動きを止めるのに四苦八苦していたが、思い切り突き飛ばし、エヴェルを押し倒して押さえつけた。
「今だ!行け!」
ライトはエヴェルと力比べを始めた。スインは静かに頷くと、矢を放った。ライトは素早くエヴェルから離れたが、威力は大きく、山が崩れ始める程だった。皆は吹き飛ばされ、散り散りになってしまった。
「いててて……」
ツーハは誰よりも早く目覚め、戦場を目指した。
「ええと……たぶんここ」
ツーハが降り立った所では、瓦礫に埋もれたライトの尻尾だけが見えていた。
「ライ兄!」
ツーハはライトの尻尾を引っ張ったが、全く何も起こらなかった。
「ライ兄ー!」
ツーハは大泣きし、その泣き声は周囲に響き渡った。
「何事だ。やかましい」
その声を聞いたシンがやって来た。
「あ、ぼうしだ」
ツーハはしゃくり上げながら
「俺は帽子じゃない。こいつ、埋もれたのか」
「ライ兄しんじゃったー!」
ツーハは泣く勢いを強めた。シンは溜め息をついた。
「バーカ。この程度で死ぬ訳ないだろ」
シンは自分の影から黒い手を出し、ライトの上の瓦礫を取り始めた。
「ツーハも手伝う!」
ツーハは軽い石などを取った。僅か二、三分でライトの上の瓦礫は全て取り除かれた。ツーハはライトの頬をツンツン触り始めた。
「ライ兄ー」
ライトは「んー」と言いながらも目をうっすらと開けた。
「あれ?エヴェルは?」
ライトは辺りを見回した。
「お前が飛ばされただけだ」
シンは歩き始めた。
「ありがとな!」
とライトが言っても、シンは振り向かなかった。
一方、他のメンバーはスインによって起こされた。しかし、パキラは瓦礫の隙間に挟まって動けなくなっていた。
「大丈夫か?」
フウワは周りの瓦礫をテールハンドで破壊した。
「ありがとー」
パキラはフウワのテールハンドに触れた。
「わっ、ふわふわ」
「早く行くぞ」
フウワはテールハンドを引っ込めた。パキラは口を尖らせたが、別に何かを言う訳でも無かった。




