第五部 ツーハの大作戦
一方、フォニックスの本拠地では、ツーハとコウがもう遅いというのにテレビに張り付いて離れなかった。なぜなら、ニュースではフォニックスたちが戦っていることをひっきりなしに報じていたからだ。
『今後も被害が拡大する恐れがあります。近隣の皆様は、速やかに避難して下さい。繰り返します―』
コウとツーハはテレビを睨んでいた。
「フォニックスはちっとも映って無いぞ!全く、ニュース見ても安否確認出来ねぇ」
「そうだそうだー!」
その時、リビングの置き電話が鳴った。コウはすぐ受話器を取った。
「もしもし。ん?ああ……は?……いや、良い。ありがとう」
ガチャン、と勢いよく受話器を戻したかと思うと、コウは壁を殴った。しかし、鉄骨構造だったので壁はびくともせずコウは跳び上がった。
「いった、いった」
コウは拳に息を吹きかけながら跳ね回っていた。ツーハはその様子をバッタを眺める様に見ていた。少し間を置いて、コウはソファに座った。
「どしたの?」
「ソウマさん、またやらかしたってよ」
「……じばく?」
「全部」
ツーハは首を傾げ、コウはため息を吐いた。
「俺、病院まで見に行くから、お前はもう寝てろ。ぜっっっったい!付いてくるんじゃないぞ!」
「ふい」
コウは上着を羽織って出て行った。ツーハはそれを見届けると、パソコンを起動させた。そして、ニュースの画面を見つつ入力して行った。
「ええと、きつねの国、エノキ……じゃなかった。エノモト町、やみやしき前地区……っと。ほーほー」
ツーハはパソコンでここからフォニックスの戦場までの道のりを見ていたのだった。
「ふっふっふ。ツーハをなめたコウが悪いのさ!」
ツーハは外に出たが、あまりの寒さに全身で震え上がり、一旦退散してダウンコートを着て、ニット帽や手袋も装備した。
「よし!せーぎのみかた!ツーハ!みんな助ける!」
ツーハはきちんと戸締りをしてから空を飛んだ。そう言った所はきちんとフウワから言われていた。
「うーんと、あの山の方か!」
ツーハは先程の地図を学校で貰ったプリントの裏紙に鉛筆で写していた。もちろん、ツーハ本人にしか分からない程雑多で、縮尺やら方角やらなどは一切考慮されていない代物だが。それでも、ツーハは目印さえあれば良かったようだ。迷ったり悩んだりする事なく、一直線に目的地まで向かった。
「ふわぁぁ」
しかし、同時に眠気も襲ってきた。
「せーぎのみかたは、ねたりなんかしない!」
ツーハは頭をブンブンと振った。




