第三部 自己犠牲
ザン、と恐ろしい音がした。しかし、アインは痛みも何かが触れた感じもしなかった。不思議に思ったアインは目を開けた。すると、目の前には……
「ソウマさん!?」
そう、ソウマがいて、相手の攻撃を受け止めていた。ナノガは攻撃が防がれたことを確認すると一旦退がった。
「大丈夫?」
振り返り柔和な笑みでアインの無事で確認するソウマの腕からは真っ赤な血が滴り落ちていた。アインは冷静さを完全に失った。
「ソウマさん、腕が!」
一方、当の本人であるソウマは全く慌てていなかった。
「大丈夫だよ。これくらいで腕が動かなくなる訳ないし」
そして、そのままナノガを見た。
(せめて止血くらい、しておいた方がいいんじゃ……)
アインの思いとは裏腹に、ソウマはハエトリソウを呼び出し突っ込んで行った。ナノガは再び爪を伸ばした。
「待て!せめて止血くらいさせろ!」
さらにエントが必死に追いかけ始めた。しかし、ハエトリソウはエントが近づいて来るのを認識すると追い返そうとして来た。ソウマは皆を見る。
「すぐに離れて。なるべく遠くに」
その時丁度、ギルドが現れた。
「ここは、ソウマさんの言う通りにしましょう。でないと、あなた達が巻き込まれます」
そのまま、問答無用でソウマ以外を瞬間移動で連れ去った。
「これでもう躊躇する理由は無くなったよ」
ソウマは相手を今一度よく見る。
「これをするのは、多分今山に来て以来かな」
「僕はナノガ。あなたが何をしようとしているのかは分かりませんが、諦めることは出来ません。最後まで、退きません!」
ナノガは再び飛びかかって来た。ソウマはそれも避けずに受け止める。さらに、そのままナノガの腕を掴んだ。
「なっ……」
ソウマは決して離さなかった。自分の腕にどんどん爪が食い込んでいくとというのに。そして、彼自身が白く光った。ナノガがそれを見た時には、既に爆発が起こっていた。その衝撃はどんどん伝わっていき、木々は薙ぎ倒されていく。さらに、爆風によって砕けた岩が飛び散った。周りにあった森は、一瞬にして荒野となってしまった。視界が開けると、当然ながらナノガは倒れていた。そして、爆発を起こしたソウマ自身も力尽きていた。
「……力加減、間違えちゃったな。植物達には、悪いことをしたなぁ」
この爆発、“自爆”が、彼の特殊能力である。このようにとてつもない威力の爆発を起こすことができるが、その代償として自分もダメージを受けるのである。ソウマもその場に倒れた。
キャラクター命名秘話⑭ ナノガ
ナノガは他の四人を見ればわかると思います。
「(チーナ、レイナの)ナ」+「(ヒノガの)ノ」+「アルガの)ガ」
次回はおそらく違うものです。