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第四部 これぞ勝負

 ソウマは別に何もせずエヴェルが技を出すのを待っていた。エヴェルの技は近くに寄っただけで普通の人ならば卒倒する程度には妖気が高まっていた。急に妖気の上昇が止まったかと思うと、凄まじい勢いで光線をソウマに向かって放った。ソウマは避けずに受け止めた。

「勝負だ!」

ソウマは一歩前に踏み出した。しかし、光線がより太くなると、一歩下がった。その繰り返しを十回程した後、光線が一気に太くなった。ソウマの足が地面から離れ、飛ばされそうになった瞬間、ソウマの妖気が変わった。

「ちょっとハードだが、ブラザーの頼みだ!レッツトライ!」

そう、あの妖気を吸うことが出来るソウマである。妖気はどんどん取り込まれていき、光線の太さもどんどん細くなって行った。しかし、光線が始めの二倍くらいの太さにまで小さくなった所で、

「ブラザー……これが、限界……だ」

と元のソウマに戻った。

「ここまで細くなったら、まだ耐えられる!」

ソウマは先程吸い取った妖気でシールドを張った。光線はどんどん細くなって行くが、シールドに亀裂が入り始めた。

(結局、後は耐えるしか無さそうだ……)

シールドが割れたのと同時に、ソウマは光線を受けた。その衝撃で近くの山まで吹っ飛んだ。しかし、光線を出し続けたエヴェルの妖気は明らかに減り、彼の限界を思わせた。音を聞きつけた皆が戻って来ると、エヴェルは息が上がり、満身創痍だったが、それでも皆を睨んだ。その様子を見たムルルが、

「兄ちゃんのあんな姿、初めて見た……」

と呟いていた。


 ソウマは森の地面に横たわりながら、眠りの世界と現実の世界の狭間で揺れていた。

『ネチャダメ。マダダメ』

と中でソウマが囁き続けていた。そんな中、誰かの足音が近付いてきた。ソウマは最後の力を振り絞って起き上がろうとしたが、途中で止めてしまった。

「ソウマ!大丈夫か?」

フウワはソウマを即座に担いで走り始めた。そして、最寄りの病院へと辿り着いた。そこには今回の戦いのせいで怪我をした住民たちが大勢いた。フウワが受付で事情を話していると、自分たちを非難する様な陰口が多く聞こえて来た。

(仕方ない……か。報われないことなんて、今までいくらでもあった)

フウワは運ばれていくソウマを見送っていた。

(なのに、なんで今はこんなに胸がズキズキするんだ?)

フウワは病院を飛び出し、再び戦場へ向かった。

「本当に、腹立つなぁ……もう」

フウワの頬を雫が伝って行き、フウワは袖で拭った。

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