第三部 覚悟
一方、場の展開が無く手詰まりとなっていたエヴェルの方では、ムルルのシールドの助けもありライトによる初撃にようやく漕ぎつけた。エヴェルの攻撃は一旦止んだ。が、またエヴェルは何処かへ行った。
四人は彼らと合流し、エヴェルを探し始めたが、暗闇で、しかもイネイ抜きでの捜索は困難を極めた。唯一の希望は、シンが上から超音波も使って探している事だった。
「どうだー?」
とライトは尋ねるが、シンは降りて来なかった。そんな様子を見ていたアインとソウマは俯いていた。
「止めれば良かった……」
「ウン……」
一方、セレンは手を組んで月に顔を向け、目をつぶっていた。かと思うと、
「こっちです!」
といきなり方向を示した。シンはその声を聞き付けて降りてきた。
「こいつの言ってること、信用できるのか?」
とシンは訝しげだったが、特に他の手掛かりがある訳でも無いので、それに従う事になった。
すると、なんと本当にエヴェルはいた。
「……お前ら、一体どうやって……。つまり、下手に時間を稼ぐのも不毛という事か。仕方ない。そろそろ終わらせるとしよう」
エヴェルに急に妖気が上がるあの現象が起こり、皆は思わず後ずさった。
「最初の攻撃は今までの倍以上の威力になると思う。気を付けて」
とムルルが言っていると、ソウマの妖気が変わり、いつものソウマに戻った。
「お待たせ。その攻撃、僕がなんとかしてみるよ」
場が騒然とした。しかし、ソウマの決意に一切の揺らぎは無かった。
「ムルル君。シールドは無くていいよ。エヴェルの攻撃パターンがちょっと分かって来た気がするんだ」
ムルルは何か言おうとしてやめた。しかし、フウワだけは食い下がった。
「正気か?」
フウワはソウマの腕を掴んだ。
「大丈夫。仮に僕が行かなくても、ダメージを受ける事に変わりは無いだろうしね」
エヴェルは掌を天に掲げており、その上には黒色の球体が出来ていた。それ自体が肥大化することは無かったが、感じる妖気はヒリヒリと痛みを感じる程だった。しかも、その度合いはどんどんと大きくなっていた。
「じゃあ、そろそろ。みんなは一応離れてて。僕が防ぎ損ねても、みんなに被害が及ばない様にしたいんだ」
ソウマはゆっくりと、しかし力強い足取りでエヴェルに近づいて行った。フウワはそんな姿を見つめながら、ゆっくりとその場を離れて行った。
(無事でいてくれる……よな?本当にヤバくなったら、逃げても良いんだからな。別にそれは恥じゃない)




