プロローグ 散れど集う
皆の猛攻を受け、押され気味になっていた様に見えたエヴェルだったが、突如巨大な百鬼夜行で皆を一網打尽にした。ソウマも近隣の家に突っ込んだ。壁を突き破ることは無かったが、庭の木を一本折ってしまった。
「あっ……」
すると、丁度横を通りかかったアロンが、
「そこの金持ちやから大丈夫や!」
と言いながら通り過ぎて行った。それでもソウマはグラスヒールで治しておいた。
(さっきより成長して家の屋根くらいになっちゃったけど、どうしようも無いよね……)
ソウマは戦場に戻ったが、皆は一度に倒されていた。ソウマは皆を集めて行った。エヴェルは何処かに消えていた。ソウマは全域を探したが、スイン、シン、ヒノガだけは見当たらなかった。先程までマスコミの対応をしていて幸運にも難を逃れたフウワは、
「もしかすると、攫われたのかもしれないな。ブラックスは元々、スインを狙っていた様だ」
と言って走り始めた。
「ソウマとケトクはそいつらの治療をしててくれ!」
ソウマはグラスヒールを再び使った。皆の傷は癒えたが、ソウマは倒れた。
「シカタナイ。ネテルアイダハカワッテアゲヨウ」
ソウマはもう一人のソウマと入れ替わった。誰よりも先に起き出したムルルは、ソウマの声が全く違うことを感じ取ると一瞬固まったが、すぐに動き出して情報を知った。他のメンバーにはムルルが説明した。
(ヨカッタ。コノコエ、ヘンダシ)
とため息をつくソウマだったが、ライトがソウマの瞳をじっと見つめた。
「……なぁ、ソウマ」
ソウマはゼンマイを巻く時の様な動きで首を動かしライトを見た。
「目の色、違くないか?」
ソウマは身震いした。
「ア、エト、エト、エト……」
ライトはニッと口角を上げた。
「そっちのソウマだったのか。ごめんな、ジロジロ見て」
「イヤ、ベツニ……」
「ソウマってもっと無表情な奴かと思ってたけど、案外そうでも無いんだな」
ソウマは首を傾げた。ライトはそんなソウマを余所に携帯を取り出し、耳に当てた。
「ああ、すまん。ちょっと、手伝って欲しいというか……勿論、怪我とかはしないようにするから……」
というやり取りをした後、ライトは携帯をしまってシンに話しかけていた。
「頼む!瞬間移動使わせてくれ!」
「無理だ。影撃ちで集中力使い切った。チーナとやらはどうだ?」
「まだ起きていない」
そんなやり取りをしている二人の間に、ソウマが割り込んだ。
「アノ、シュンカンイドウ、デキマス」
それを聞いたライトは目を輝かせた。




