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第三部 絆は技を超える

 チーナはアインをスインの目の前に瞬間移動させた。

「たまには良い所見せてあげなよ、お姉さん」

と言いながら、チーナは地面を元に戻し始めた。スインは目の前のアインを見つめた。アインは飛びかかって来たが、スインはギュッと抱きしめて話さなかった。全身を使って抵抗するアインに、スインは

「どんなに大きなっても生意気になっても、私を越してっても、可愛いもんやな。私の、たった一人の家族やからか?」

と言って頭を撫でた。そして穏やかな鼻歌を歌い始めた。アインの爪が服を裂いたことも、軽く噛みつかれている事も気にせずに。歌が一周する頃には、アインの全身から力が抜け、体をスインに預けていた。


 スインはアインをおぶりながら、ソウマを見た。皆の視線も未だ起きていないソウマに集中していた。ソウマの指先が微かに揺れたかと思ってからは一瞬だった。フウワは気が付くと飛ばされて向かいの壁に背中をぶつけた。ソウマはフウワを睨んでいた。

「……どういうことだよ、レイ」

しかし、彼の口から出てきたのはこの場にいない人の名前だった。誰も返事をしていないまま、ソウマが捲し立て始める。

「俺は邪魔だったのか?それとも、利用していただけだったのか?自分で攻撃出来る様になったからって……捨てたのか?俺を?許せない!この体を乗っ取って、復習してやる!」

とソウマは右手を上に上げ、黒色の塊を作ったが、動きが止まった。

『僕の仲間を勝手に傷つけるな!そんなに欲しいなら、あげるよ、この体!でも、使い物にならなくなってから渡す!』

といつものソウマの声が聞こえたかと思うと、ソウマは自爆を始めた。何回も何回も、爆風が洞窟内を走り、段々と洞窟が崩れ始めた。

「ソウマ、落ち着け!」

というライトの言葉も虚しく、廃坑は崩れ落ちてしまった。皆はとりあえず外へ避難した。


 ソウマは力尽きて倒れていた。フウワがそんなソウマに近付くと、ソウマは、

「ごめん……なさい」

と小声で言った。フウワは溜め息を吐きながらもソウマを持ち上げて運び始めた。

「変な奴に体を乗っ取られずに済んだし、今回ぐらいは多めに見てやるよ」

とフウワが歩きながら言っている頃には、ソウマは既に夢うつつの状態だった。

「折角話したのに、こういう時だけ寝やがって。全く、世話のかかる奴だ」

フウワはソウマをアインに預けると、他のメンバーと一緒にエヴェルを探し始めた。岩をどかしたり、妖気を探ってみたりしたが、中々見つからなかった。

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