第二部 悪夢は連鎖する
アルガはズンズン進んでいき、スインの目の前に辿り着いた。
「対象物ノ接近ヲ確認。攻撃方法ヲ変更シマス」
スインはアルガを蹴った。しかし、アルガはそれにも耐え、スインの首にネックレスを掛けた。
「……」
スインの動きが止まった。アルガはすぐにスインから離れたが、もう水の弾丸は飛んで来なかった。スインの瞳に、光が戻り始める。
「あ……ア……アイン……」
スインはそのまま倒れた。アインがスインからネックレスを外し、自分の首に掛けると、スインは眠っていた。
丁度その時、ソウマはムルルに話しかけた。
「やっぱり、自分から離れると難しいね……」
「でも、あの一瞬で透明に出来たのは十分凄いよ。それにしても、バレずに済んで良かったね」
「うん。こんな感じなんだね、サポーターって。アルガ君に上手くシールドが張れて良かった」
その時、シンが起き上がった。皆が身構えたが、シンは特に変わった様子や妖気も無く、平然と歩き出した。
「この程度、大した事じゃ無い」
と言いながら、そっぽを向き、翼を広げた。皆はシンに近付いた。その時、黒いオーラが広間に放たれた。ムルルはライトとエントをシールドで守り、ナノガも自分の子供たちを同様にしたが、他のメンバーは成す術もなく当たって倒れた。
真っ先に起きたのはフウワで、テールハンドを容赦無く振り回し始めた。
「どうする?」
とライトはエントに話しかけたが、エントは返事もせずにフウワのテールハンドの一つを掴んだ。もちろんエントにもう一つが近づいて来たが、ヒノガが刀の鞘でそれを防ぎ、ナノガはフウワを手刀で気絶させた。ライトはフウワに駆け寄り、
「相変わらずデカいな」
と呟くと、フウワは起き出して
「うるさい!」
とテールハンドでライトを殴り飛ばした。
「……あれ、私は……」
とフウワはテールハンドを仕舞いながら頭の横に手を添えた。そんなフウワに、ムルルが近付いた。
「“悪夢”とブレックジンの合わせ技だよ」
「そうか……。迷惑かけたな」
「多分、誰も気にしてないと思うよ。それより、他のみんなが心配だ」
フウワは頷き、たった今起き上がったばかりのアインを見た。
アインは丁度近くにいたチーナに向かって突進した。
「あら、これでは獣じゃない」
チーナは自分のいる地面を隆起させた。アインは見上げる事しかして来なかった。
「確かに私たちの本質は獣だけど……なるなら品性のある獣になりなさい」
アインはチーナを目指して壁を登り始めた。チーナはそれを見下ろすばかりだった。




