第四部 圧倒的な謎の力
グラスシールドは優秀で、針によって割れる事は無かったが、それでも時間の問題の様に思えた。
(僕は今まで、“先輩たち”に頼って来た。でも、そんなんじゃ僕自身は強くなれない。僕が強くならなきゃ、運命は変えられない!)
ソウマがグラスシールドを洞窟いっぱいに広げると、蜂たちはグラスシールドを認識出来ないのか張り付いたままになった。
(グラスヒールみたいに、エネルギーを集中させて……)
ソウマは両手を合わせた。両手の前に、淡く黄緑色に光る球体が現れ始めた。それはみるみる大きくなって行き、とうとう洞窟の穴と同じくらいになった。
(ええと、技名は……)
「グラスビーム!」
(我ながら安直すぎる……。また考えておこう……)
ソウマが合わせた両手を話すと、その球体は光線となって洞窟を走った。蜂たちは一匹残らず焼き払われたが、光線が走った後には季節の植物たちが青々と生えていた。
「初っ端から妖力使い過ぎじゃないか?」
と言いながら、フウワが姿を現した。
「ごめん。ちょっと熱が入っちゃった」
とソウマは身を小さくするが、フウワはボソリと、
「怪我がなくて良かった。ごめんな、逃げてしまった」
と言った。それはソウマにきちんと聞こえていた。
「いいよ。誰しも苦手なものはある訳だし。それに……」
「それに?」
「最悪、フウワさんなら、分けてくれそうだし。妖気」
と言ってソウマは前を向き、歩き出した。
「そ、ソウマ……?」
フウワは顔を真っ赤にした。この世界には、妖石以外にも人から人へ妖力を移す方法が存在する。例えば、接吻である。
「最悪の組み合わせだ」
と言いながら、シンはスインに抱きつかれていた。
「嫌やった?」
「嫌に決まってるだろ!」
とシンはスインの腕を払い除けたが、スインは
「そっかあ。嫌やったかあ」
と言いながら頭を撫でて来た。
「触るな!」
シンはスインから離れた。その時、誰かの足音と妖気が近付いて来た。
「……来たか」
シンは狐の耳に加えてコウモリの耳を出した。スインは透明になった。
「丁度良かった。まとめて捕獲出来そうだ」
現れたのは、やはりエヴェルだった。エヴェルは謎の黒いオーラを放った。シンは翼で顔を覆ったが、その場に倒れてしまった。
「妖力は消費するが、仕方あるまい」
エヴェルは二人を瞬間移動させようとした。その時、炎で出来た大蛇がエヴェルを襲った。エヴェルは避けたが、シンとスインは瞬間移動されずに済んだ。
「随分と大人数で来た様だな」
ヒノガは刀をエヴェルに向けていた。




