第三部 驚くべき判断力
アインは熊の頭に飛び乗り、右手を突っ込んだ。熊の手が伸びて来て、爪がアインの肩に触れて赤い血が滴ったが、次の瞬間熊の手はだらんと降ろされ、そのまま倒れた。
「え……何が……」
エントはその一連の流れを呆然としながら見ていた。アインは動かなくなった熊から離れ、ポケットから滅菌ガーゼを取り出して止血をし始めた。
「いくら側が強くても中から凍らせればどうって事ないでしょ」
アインはそのまま歩き出し、エントもそれに続いた。
一方、ライトとムルルは百近くの猟犬の相手をしていた。
「倒しても倒しても全然減らない……」
ライトは袖で額の汗を拭った。犬たちの連携はライトすらも翻弄しており、攻撃しても決定打となりにくかった。
「お腹は弱いよ」
とムルルはシールドを張るのに一生懸命になりながらも言った。
「サンキュー」
ライトは雷で槍を作った。
「エレキスピア!」
ライトはその槍片手に飛び掛かって来た犬の腹部を突いて倒していた。
「……すごい」
とムルルが零すと、ライトは犬の方を向いたまま、
「別にそうでもないぞ?ムルルが言ってくれるまで気づか無かったし」
と答えた。
(僕は少ししか言ってないのに、咄嗟に槍を出して使おうなんて判断が出来るのは、十分凄いけどな……)
ライトはそのままどんどん突き進んで行き、一人だけ体に白いラインが入った犬を見つけた。その犬は決して飛び掛かって来ず、その代わり周りの犬が一斉に飛び掛かって来た。
「うわっ」
ライトは押し倒されたが、牙や爪はムルルのシールドによって阻まれ、ライトは持っていた槍を雷に戻して自分の上に落とした。犬たちは動かなくなった。
「シールドにも限界があるから、無理はしないで」
とムルルが言ったが、ライトには聞こえていなかった。
「こいつが最後の一匹か」
とライトが攻撃しようとすると、その犬は全速力で逃げて行った。
「仲間を呼びに行ったとか?」
とムルルは言ったが、ライトは腰に手を当てて、
「大丈夫だろ。仮に来ても倒せるだろうし」
と笑った。
「楽観的……」
「結局」
「私たちはいつも通りか」
と、ソウマとフウワは言った。その時、ブブブブと不吉な音が段々近づいて来た。それはなんと、蜂の大群だった。
「いやー!!!」
とフウワは叫んで奥の方へ走って行ってしまった。ソウマはフウワのために留まったが、攻撃は全く当たらなかった。
「このままだと刺される……」
ソウマはクラスシールドを張り、蜂に向かって走り始めた。針がシールドに当たる音がした。




