第三部 自分たちが出来る事
「クゥゥン」
イネイの手に、ロルは自らの顎を乗せた。すぐにソウマがやって来た。
「ロル君!」
ソウマはグラスヒールを使ったが、ロルは眠ってしまった。
「イネイさん、頼まれてくれる?」
「はい!頼まれました!」
ソウマは走り去っていった。
「とりあえず、もっと安全な場所に行こうか」
イネイはロルを持ち上げようとしたが、あまりの重さに悶絶した。
「おぶって行こう……」
ロルは少し鼻息を立てていた。
「ふふっ。こうして見ると、ちょっと可愛いですね」
トルキはもうなりふり構わず攻撃し始めた。岩は絶え間なく落ちてきた。皆は何度もこれに苦しめられて来たので、冷静に壊し続ける事が出来た。
「トルキ、もう自我を失ってるかもしれない」
そこから少し離れたアインが隣にいるムルルにそう話した。
「そっか……。兄ちゃんは、どうしちゃったんだろう。少なくとも、僕には優しい人だったのに……」
ムルルは体操座りをし、顔を脚に埋めていた。アインはムルルの背に手を当てた。
「多分、トルキは、今、苦しいと思う。私も同じ感覚になった事があるから。でも、エヴェルって人も、同じなんじゃないかな?」
「兄ちゃんは、操られてない」
「そうかな?それにね、人は、技じゃなくても操られてるよ。みんなが右を向いたら右を向く。言葉巧みに騙される。そんな事ばっかりだよ」
ムルルはアインを見た。目は赤くなっていた。
「じゃあ、兄ちゃんは、まだ……」
「そうかもね。さ、私たちも、出来る事、しよっか」
ムルルは頷いた。
あと一歩かと思われたが、岩は絶え間なく落ちて来、皆はそれで手一杯になってしまっていた。状況に変化はない。
「このままじゃあ、こっちの妖力が持たねーな」
フウワは二つのテールハンドで岩を次々に破壊していた。そのすぐ側にはライトがおり、蹴りで岩を破壊し続けていた。
「なあ。フウワ」
「ん?」
「トルキ抑えておけないか?時間があれば、とっておきが使えるんだが……」
「どれくらいだ?」
「……二分くらい……」
その時、フウワはライトの頭上の岩まで破壊した。
「今から始めとけ」
ライトは一瞬フウワを見たが、すぐに目を閉じて足に妖気を集中させ始めた。フウワはそれを見ると、左側のテールハンドでトルキを掴んだ。その瞬間、岩が止み、フウワのそれから逃れようと引っ張った。フウワは引きずられそうになりながらも踏ん張り、右の方でも掴んでより強く握った。
「くっ……」
それでも、フウワは少しずつ引きずられていた。




