プロローグ 復活する石人
石は周りの苔むしたものまで巻き込んで人型になった。人型と言っても、長い尾を持ち、口は頰の辺りまで大きく開いていた。その上長い爪は月の様に冴え冴えと光っていた。
「どうしよう……」
ソウマは石の引っ掻き攻撃をかわしながら考えていたが、後ろの木に当たりそうになった。
「グラスシールド!」
緑色の半透明なシールドは、石の引っ掻き攻撃を受けてもびくともしなかった。ソウマはそれを用いて攻撃を受けていったが、石の妖力が尽きる様子は無い。
(やっぱり、コアか何かを壊さないと無理なのかな。ゴーレムに近いのかもしれない)
とソウマが考え事をしていると、誰かがソウマの体を乗っ取った。
「俺を呼んだか?ブラザー!」
『呼んでない』
「シャイだな!まぁ、可愛いブラザーの為、一発かましてやるぜ!」
ソウマ?は襲ってくる石を飛び越え、尾を掴んだ。そして、根本からもぎ取ってしまった。
「オー、随分と暴れてくれるじゃーないか」
尾は本体と再びくっつこうとくねくね身をよじらせていた。しかし、ソウマは一向に離そうとしない。
「おねんねしな、小石ちゃん」
その瞬間、尾は元の石に戻った。本体の石もたじろいだ。
『妖力が……増えてる?』
中のソウマも驚いていた。
「ご名答!」
ソウマは指を鳴らした。
「流石俺のブラザーだ!」
石は謎のビームを放って来た。
「おっと。危ない危ない」
ソウマは右に避けた。
(ビーム出せるとか聞いてないんだが!?ただでさえ相手を目で追うだけでも苦労してんのによ!)
『大丈夫……?』
「だだだだ大丈夫だ!出来る!きっと!」
『……』
石は再びビームを出してきたが、ソウマの体は突然横に動き出した。
「ガルルル」
ロルがソウマを乗せて走っていたのだ。
「ブラザー、ワンチャン飼ってたのか?」
『……まぁね。ロル君、怒らないと良いけど……』
「グル……」
「サンキュー、ワンチャン。俺目が悪くて、よく見えなかったんだ。俺の目になってくれないか?」
急に口調が変わったソウマに、ロルは、
「……ヴォウ」
と言って加速した。
「良い走りだ!」
ソウマはロルが石に飛びかかると、自ら触れてバラバラにした。
「感謝するよ」
ソウマは胸に手を当て、ロルの前で片膝をついた。少しすると、ソウマは立ち上がり、一つだけ紫色の石を取り出した。
「これがコアってやつか。頂いてくぜ!」
コアは色を失い、ソウマの妖力は全回復した。
「ブラザー、ワンチャン、アディオス!」
その言葉を最後に、ソウマは元に戻った。




