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第五部 神か精霊かそれとも

 カブラはカルロウのベッドの横で、電話を掛け続けていた。

「ワッチも馬鹿だ。もっと仲間を作っておくべきだったな、コリャ」

もう電話帳の残りも薄くなっていた。カブラは頭を掻いた。その時、カーテンが風で大きく舞った。

「閉め忘れか?」

と、窓枠に手を掛けたその時、背後に気配を感じた。

「なっ……」

カブラは素早く振り向き、口を少し開け、牙を出した。そこには、月の光を受けている艶のある黒く長い髪と、暗闇でもはっきりわかる琥珀の様な目を持った者が立っていた。

「おっと。すまない。入り口が閉まっていたのでな……と言っても、信用されないか」

彼は胸に手を当てた。

「私はイム。ただの浪人だ。だが、少しはこの無駄な人生を人の為に使いたくてな。人の病気やら怪我を治して回っている。こうやってな」

カルロウがぼうっと光り、怪我があっという間に治っていった。

「お、お前さん、何者だ?」

イムは踵を返し、

「言っただろう。ただの浪人だと」

と言い残して瞬間移動で消えてしまった。

「あ……れ……」

カルロウは静かに起き上がった。

「もしかしたら、神様か精霊かもしれねェな。……医者が言うのもなんだが」

「そう……ですか」

カルロウはクスッと笑った。そして、ベッドから降りようとしたが、

「あれ……体が……」

「筋力が落ちたんだな。コリャリハビリだ」

「明日から、ですか?」

「無理はすんなよ。別に明後日からでもいい」

カルロウは微笑むと再び寝てしまった。

(なんだか、印象が変わったな……)


 「次は何処に行こうか」

イムは分かれ道で悩んでいた。すると、何処かから声が聞こえてきた。

『久しぶり。リィム。そろそろ、決めたら?』

「悪いが、君の理想には具体性を感じないのでね」

『じゃあ?向こう側につくって事?』

「向こうは向こうで、その振る舞いに知性を感じないのでな。争いは正義と正義のぶつかり合いだ。なら、私は誰ともぶつからない正義でゆうるりと過ごした方が建設的なのだよ」

『ふぅん。つまんないの。あと一人はまだ見つかってないし、半分の状態でやるのはつまんないじゃん』

「悪いが、意見を変える気は一切無いのでね」

イムそう言って煙管をふかし始めると、声もしなくなった。

(見つかっていない……か。ついでに君は、視野が狭すぎるのだよ。だが、教える義理も無い。それに、あれにはもっと自由に生きてほしいからな。新しい“四神”の形を、そろそろつくっていく時期なのだよ)

結局、イムは右を選んだ。この選択が何処に繋がっているのかも知らずに。

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