第三部 手に汗握る心理戦
現れたのは、猫の耳と尻尾を持つワンピース姿の少女だった。
「もうっ、使えないんだから」
相手は慌てて謝罪していたが、少女は全員を長い爪で引っ掻いた。
「ん、ムルル君じゃん。あーあ、味方だったら仲良くできたのに。敵だったら、殺らなきゃなんないね」
ミレイは時間制限があるのかひとりでに消え、イネイがそこにいた。少女は舐める様に皆を見た。
「選びなよ。殺されるか、自殺か、ブラックスに入るか!」
えへへ、と笑う姿もその言葉を聞いてしまえば悪魔にしか見えない。ムルルはライトに話した。
「彼女はブラックスのNo.3、毒殺少女ことへルン。気に入らなければ仲間だろうと爪で引っ掻いて毒で殺すから、結構怖がられてたよ。爪と牙に毒があるから、掠っただけでも即死」
ライトは、「分かった」とだけ言うと、大きく空気を吸い込み、ヘルンに向かって叫んだ。
「その四、お前に勝つ!」
へルンはライトを見つめた。
「馬鹿だなぁ。私よりも、ずっと!」
へルンは膨れっ面になった。
「ああ!俺は馬鹿だ!」
とライトは言い返した。すると、へルンは突っ込んで来た。しかし、エントがライトの前に立ちはだかり、へルンの手を掴んだ。
「なっ……」
「逆に言えば、毒以外は別に何も無いって事だろ?」
エントは特殊能力によって、へルンの手を恐れる事なく握った。ヘルンはエントの顔面に蹴りを入れて脱出した。
「間抜け!」
とフウワはエントを怒鳴ったが、エントは鼻血を垂らして倒れていた。
「気を取り直して、と。じゃあ」
と再び突っ込もうとするヘルンにスインが話しかけた。
「知らんの?毒を無効にする技。やから、エント君だけやないで」
へルンは踏み止まり、皆を何度も何度も見た。その様子を見て、ムルルは考えていた。
(成程。へルンは強いけど、まだ子供だ。知識はあまり無い。でも、これ、へルンが攻撃してきたらバレるんじゃ……)
へルンは水を発生させ、フォニックスに向かって飛ばした。
「仕方ない。でも、私は毒だけじゃ無い!」
(賭けに勝った……?いや、騙された振りをして水に毒を仕込んでるかもしれない……)
「おりゃ!」
エントは水にあえて突っ込んだ。しかし、特殊毛は反応しなかった。
「馬鹿なの?自ら技をくらうなんて」
「ちょっと暑かったんだ」
(エントさんにこの心理戦が務まるの……?)
「訳わかんない。やっぱり、こんな部下は嫌ね。価値観が違いすぎる」
ヘルンは、電気を発生させ、辺りに広げた。
「徹底的に、やらせて貰うわ」




