表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/185

第四部 別人格は傲慢で

 倒れたままのソウマに、足音が近づいて来た。

「楽で助かったわ。今すぐ、降参する事ね。エヴェル様はそうすれば命だけは助けてあげるってさ。ま、一生奴隷のままだろうけどね」

随分と話した後、女はソウマの顔を覗き込んだ。

(そんなの、断るに決まってる……でも、どうやって戦おうかな……皆んなに迷惑はかけたくないし……)

ソウマは思い悩んでいた。しかし。

(まずは木を、ぬ、け……)

そこで意識は途切れた。

「馬鹿馬鹿しい」

「は?」

「お前ごときがこのソウマ様に、交渉を持ちかけるなど一万年早い!」

ソウマは木をへし折って立ち上がると、同時に女を一瞬で倒してしまった。

「身の程をわきまえろ、愚民が」

そのまま、キシュウの所へ向かった。キセキはソウマを見て、

「君、本当にさっきの?」

と尋ねたが、ソウマはキシュウしか見ていなかった。

「ふん。随分と偉そうな立ち振舞いだな」

キシュウはソウマを見下ろした。

「当然だ。俺はソウマ様だからな!お前から来てみろ。先程の言動を後悔させてやろう」

キシュウは巨大な火の矢を放ったが、ソウマの防御技はそれを最も簡単に防いだ。

「この調子では、技も使いそうにないな」

ソウマは軽く走るだけで一気に距離を詰め、普通の蹴りでキシュウを空高く突き上げた。

「フィニッシュはお前にくれてやろう、原石」

キセキは迷いなくキシュウにトドメを刺した。


 ソウマが突っ立っている横で、キセキはテキパキと二人を縛った。

「ありがとう、ございました」

キセキの言葉に、ソウマはニッと笑って見せたが、すぐに辺りを見回し始めた。

「あれ?僕はいった、い」

ソウマはふらっとよろけたが、なんとか立ち直った。その時、丁度、

「「ソウマー!」」

という声がし、フウワとエントが駆け寄って来た。それを見たソウマは、意識を手放したのだった。


 フォニックスが到着する頃には、キセキは姿を消していた。

「お礼を言おうと思ったのに……」

項垂れるムルルを、スインが宥めた。

「また会えるやろ。きっと。名前は?」

「ええと、キセキ、だったかな」

アインは固まった。

「?」

「えー!名前の最初と最後両方にキがつくのは王族の中でも屈指の強さを持つ人だよ?」

今度はムルルが固まったが、すぐに、

「そういえば、ソウマさん、大丈夫なのかな?」

と思い直した。

「じゃあ、私たちも行こっか。病院」

気付けば、もう夕暮れ時だった。長く長く伸びた三人の影は、重ならずにそのまま伸びていった。冷たい冬の風は、等しく三人の髪を揺らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ