第二部 ムルルとソウマ
「なんでだ?」
ライトはただ尋ねた。
「……お兄ちゃんは、多分お互いを許してない……だから、会ったら決闘を始めちゃう。そうなったら、決着が着くまで止まらないかもしれない……」
ライトはニッと口角を上げ、ムルルの頭を撫でた。
「……やめ、てよ」
ライトは、ははは、と笑うと、ムルルのお腹をくすぐり始めた。
「本当は嬉しいくせにー」
ムルルは、
「ちょっ、やめっ」
と抵抗したものの、堪えきれずに笑い出した。
「こんぐらいやろか?」
二時間後、スインは電話を切ってから行った。アインは、少し空を見た後、
「あ!」
と立ち上がった。
「どうした?」
エントは電話中だった。
「オスコ……さん!」
アインは慌てて外に出ようとした。
「電波なかったんだった!今山!」
しかし、ソウマが先に出ようとしていた。
「僕が行ってくるよ」
「え!でも……」
「いいよ。僕は連絡する人もほとんどいないしね。ライト君の手伝ってあげなよ」
アインはライトを見た。電話をどんどん掛けて行っているのにも関わらず、相手が尽きそうにもない。
「……分かった」
「ムルル君は?」
ムルルは、ピョコンと耳を伸ばした。
「行く!」
「……なんで来たんだ」
オスコは半眼でやって来た二人を見、ムルルとソウマを見比べた。
「隠し子かなんかか?」
「いや、違う違う。この子は大事なメンバーだよ」
オスコは、ふぅん、と言いながらソウマを睨んだ。
「で?」
「あ、そうだったね。ブラックスの事なんだけど」
オスコは溜息を吐いた。
「わーったよ。あれで探せってんだろ?」
オスコは去って行ってしまった。ソウマは手を振った。
「あれで良かったの?」
ムルルはソウマを見上げた。
「うん。ちゃんと伝わってるみたい」
その後、道端の草を楽しみながら帰っていると、森に入った。
「ここは近道なの?」
ムルルはあまりに長い道のりに脚が疲れたので、ソウマにおぶって貰っていた。
「そうだよ」
と、ソウマが返した途端、横に飛んだ。轟音と共に元いた所の木が倒れて行った。
「勘づいていたか」
何者かが木から降りてきた。
「キシュウだ。フォニックスの一人を捕えろと命じられていてな。丁度外出してくれて助かった。宮殿にはあいつがいるからな」
ソウマはムルルを降ろした。
「付いて行かないって言ったら?」
「力ずくで連れて行くだけだ。それに、俺たちが欲しいのは首だけだ」
キシュウはソウマ目掛けて火の矢を放った。ソウマは避けなかったが、ダメージは受けなかった。
「成程。少しはやる様だな」




