プロローグ 急な呼び出し
もう何度目かの雪が降る中、フォニックスは一通の手紙を見ていた。
「随分となげーな」
エントがそう言うと、フウワはため息を吐く。ため息は白んで空気に溶けていった。
「分かった。つまり、狐の国の宮殿に来いという話だ」
エントは固まった。それを横目に、ライトはカレンダーを見ていた。
「もう十二月か……。確かに、もうそういう時なのか……」
と独り言を呟いた。ムルルが顔を強張らせた。
「とにかく」スインは、パン、と手を叩いた。「準備せなな」
皆は準備を始めたが、アインはフウワに話しかけた。
「あのさ……」
「ん?」
「狐の国の宮殿って、ここから遠いよね……?」
フウワは二、三秒唸った後、
「あ、じゃあさ」
「俺は別に交通機関じゃないんだが?」
帽子を目深に被った闇狐―シンは、やって来た。コウ以外を睨んだ。ライトは手を合わせた。
「頼む。王族の「知らん。そんなの、どうでもいいだろ」
バッサリと切り捨てられてしまい、皆は顔を見合わせた。しかし、ツーハはシンに雪玉を投げた。シンは見事に避けた。
「おい!何す
皆も乗じて投げつけ始めると、シンは雪まみれになって行った。
「おい!やめろ!」
皆は、
「「連れてってくれるまでやーめない!」」
結局、シンの瞬間移動のお陰で無事辿り着く事が出来た。今、二人の男女と向き合っている。男性が話し始めた。
「わざわざお越し頂き、ありがとうございます。私は先代国王のストキです。そして、こちらはクラキです」
クラキはお辞儀した。皆はやけに姿勢が良く、お辞儀を返した。ストキは再び話した。
「今回ここに来て頂いたのは、盗聴を防ぐためです。話題については、ご存知の通り、ブラックスについてです」
ムルルは俯いた。
「近年、狐の国の国際的な評価は低下を続けています。そこで、皆さんには、ぜひこの件を解決していただきたいと思います」
ストキは俯いた。
「……というのは建前で、あなた方には、彼らと何か縁がある様な気がするのです。その上、向こう側から倒しに来てくれます。これは、おそらくあなた方で解決すべきだという事だと思います」
ストキは皆を真っ直ぐに見据えた。
「しかし、少し荷が重すぎますね。なので、出来る限り多くの協力を要請しておいて下さい。今まで培った人脈が、きっとあるはずです」
ストキは、どうぞ、と言った。皆は携帯を取り出した。そんな中、ムルルはライトの服の裾を引っ張った。
「どうした?」
「これは僕のわがままだけど……ウルベフには、何も言わないで欲しいんだ」




