第四部 目は口ほどに物を言う
シンが地面に落とした影から漆黒の手が出、ハスを捕らえたかと思うと、カリに向かって投げ飛ばした。姉弟は激突した。シンはその隙に手を再び伸ばして二人同時に捕らえ、地面に叩きつけた。シンは静かに降りて行った。
「……すげぇ」
エントはシンの技動きに釘付けになっていた。
「所詮この程度か」
シンはスルスルと翼をしまっていった。そして、フォニックスの方を向いた。
「お前ら、どんだけ弱いんだよ。こんな奴ら大した事な「すげぇ!すげぇよお前!」
ライトに言葉を遮られ、更に褒められたシンは逆に後退りした。
「ん?どうした?」
ライトは首を傾げた。
「どうしたじゃねぇ!人の台詞をしっかり聞け!」
しかし、目元は嬉しげだった。
「そうは言うけど、なんか嬉しそうだぞ?」
とエントがシンを指差しながら言った。
「うるせぇ!」
シンはそっぽを向いた。しかし、その方向から誰かがやって来た。
「ん?誰かと思ったら、フォニックスさんか。テルちゃん元気しとるってなぁ。ほんまにおおきに」
「げっ」
そこには、銭湯を営んでいるアロンがいた。寝起きなのか、少し浴衣が着崩れていた。シンは彼を睨んだ。
「シン、珍しいな。そんな嬉しそうな顔、初めて見たで!」
アロンは笑った。シンは顔を真っ赤にし、飛び立とうと翼を出した。
「ええもん見れたわ。また今度、うちの店来な。ちょっとまけたるわ!」
アロンも去って行くと、皆はカリとハスを抱えて病院に急いだ。
翌日。姉弟はフォニックスの本拠地で目を覚ました。
「おはようさん」
と、スインが声を掛けると、二人は目を擦りながら彼女を見た。
「あれ……。ここ……」
とカリが言うと、スインは少し笑った。
「フォニックスの本拠地やで」
二人は急に目を大きく開け、スインから離れようとした。が、
「「いてっ」」
傷のせいで動く事が出来なかった。
「大丈夫やで。お母さんも、呼んだしな」
二人は固まった。その時ドアが静かに開けられた。
「カリ!ハス!」
その女性は、二人を抱き抱えた。そのまま静かに涙を流していた。カリは女性の肩に掴まり、安心したのか眠ってしまった。ハスも同様だった。スインはその様子を、ただ静かに見守っていた。口角は上がっていたが、目は笑っていなかった。どこか遠くを見ている様な気さえした。
一方、カルロウはまだ目覚めていなかった。
「こりゃァ派手にやったもんだねェ。来るのがあとちぃとばかし遅かったら、腕、使えなくなってただろうねェ」
カブラがアインにそう言った。




