第三部 思いはいつでも重い
それからカルロウに集中攻撃が浴びせられるまではほんの一瞬だった。カルロウは宝石になっているので、一見ノーダメージに見えるが、月の光を反射する粉が散っていた。
「カルロウ!」
と、叫んだエントは、自身の体に炎を纏わせ、突進した。そのまま姉弟を弾き飛ばしたが、彼らはすぐに立ち上がった。カルロウは赤を出し、それを斧の形にした。
「待て!カルロウ!」
フウワはカルロウを制止した。カルロウは立ち止まると、そのまま倒れた。宝石から元に戻ると、攻撃を受けていた腕は削られたからか無惨な姿になっていた。しかし、斧だけは消えなかった。エントがそれを持った。
「重いな……。でも、カルロウの思いって事か……」
エントは一拍おいて、「ダジャレ?」と言った。そのせいで雰囲気は台無しになった。
「「おい!」」
ライトとフウワの声が揃った。とにかくもエントは走り出した。ハスの爪を斧が受け止めると、なんと爪の方が折れた。ハスは地面に隠れた。
「遠いな……」
ここからだとカリは小さく見えた。斧は到底届きそうにない。
「フウワ!」
「だが、お前、高い所苦手じゃないのか?」
というフウワの問いかけに対し、エントは斧をぎゅっと握りしめて返した。
「それでも、俺は行く!」
エントはフウワから離れ、カリへと向かった。カリはエントに気付き、避けてしまった。しかし、エントは斧を投げた。斧はカリに命中し、エントと同じ様に落ちて行ったが、途中で立て直した。それに対して、エントはそのまま落ちていく事しか出来なかった。エントはなんとか体勢を変えようと四苦八苦していたが、黒いものに視界を遮られた。
エントが落ちて来ず、下の皆は空を見上げていたが、徐々に冷や汗をかき始めた。しかし、何かが降りて来た。十一月の冴え始めた月を背にし、被っていた帽子が取れたその人物は、エントを抱えて翼を羽ばたかせながらゆっくり降りて来ていた。
「……美しい」
スインは無意識のうちにそう呟いていた。その人物はエントをライトに渡し、見えない姉弟を睨んだ。
「あ、ありが「ふん。礼を言っている暇があったら、サポートの準備でもしておいたらどうだ。あと」
その人物、シンはカルロウを見た。
「とっとと病院行って来い。こんな奴ら、大した事ないだろ。俺だけでも十分なくらいだ」
シンは大きな蝙蝠の翼を広げ、再び夜空に飛び立った。そして、低空飛行で地面を攻撃した。そこには、きちんとハスがいた。皆は彼の実力を目の当たりにした。




