第二部 力は身を滅ぼす
すると、「うわぁぁっ!」という声と共に少年が飛び出して来た。少年を少女は中から怒鳴る。
「ちょっと!ハス!出てきちゃ駄目でしょ!」
ハスは言い返した。
「むりだよ、カリねえちゃん!だってさむくなったんだもん!」
そのまま、手を大きな爪に変化させ、地中に潜って行った。少女は頬を膨らませていたが、すぐに切り替え、ハスを呼んだ。ハスも素直に出て来た。
「こうなったら……あれ、やるよ!」
ハスが頷くと、カリは急降下し、ハスと手を繋いだ。兄弟たちはそのままコマの様に回転し始め、妖気がどんどん強大になって行った。
「防いで!」
というアインの言葉を最後に、二人はエネルギーを手放し、爆発させた。白む景色の中、フォニックスは散り散りになった。
「いてててて。でも、こんだけか?案外そんなにだったな」
と、エントは独り言を言いながら立ち上がり、ライトを見つけた。
「兄者?どうしたんだ?」
しかし、明らかにぐったりしていた。
「毒だ。エント……」
エントは急いで駆け出した。
「どこだ!」
カリとハスはすぐに見つかった。
「あれ?まだ残ってる人がいるよ?」
とハスが言うと、カリはエントに向かって暴風を起こした。
「おい!毒を治せ!」
とエントは叫ぶが、聞こえていない様子だった。
「グラスヒール!」
しかし、その声と共に光る植物が芽生えたり、植物が更に成長したりし、ライトも立ち上がった。
「ぬぇぇぇ?」
ハスは未知の技に明らかに動揺していた。
「くっ……」
カリは拳を握り締めながらソウマを見ていた。
『……聞け』
その時、初めて聞く男の声が何処からか聞こえて来た。
『お前らは余りにも弱すぎる。だから、力を与えてやる事にした。感謝しろ』
「そ、それって……」
カリは後退りしたが、その瞬間、ハスと共に頭を抱えて座り込んだ。異常な程に膨れ上がって行く妖力と引き換えに、二人は苦しんでいた。叫びもした。思わず、耳を塞ぐメンバーもいた程だ。
「酷い……」
アインもその一人で、一筋の涙を流していた。
数分後、妖力の上昇は止まった。しかし、彼らの姿は異様だった。翼が明らかに折れていたり、爪が欠けていたりした。彼らの目は何処を見ている訳でもなく虚ろで、空いた口も閉まらなかった。
「……許せない」
カルロウは、珍しく本気で怒っている様だった。目を大きく見開き、耳や尻尾の毛は逆立っていた。カルロウは赤を出し、自らも宝石に変えて、二人に近付いた。センサーに引っかかった様に二人は動き出した。




