第五部 舞い込んだ三つの鍵
翌日。フウワがライトを起こしに行っている間、ムルルはすっかり馴染んでいた。
「とても美味しいです、ありがとうございます」
ムルルはコウのパンを食べながらそう言い、お辞儀をした。コウはそっぽを向いて、
「大したもんじゃねえよ!」
と言っていた。それを見ていたエントは、
「この歳で礼儀がここまでなってるってすげーな。どっかの食いしん坊と違って」
と言ってツーハの方を向いていた。
「ほがほがほ?」
ツーハからは何も聞き取れなかった。
「おはよー」
と起き抜けで髪もボサボサのライトがやってくると、
「おはようございます」
とムルルが返した。
「別に敬語じゃなくていいぞ?」
とライトは言ったが、ムルルは首を横に振った。
「年上で恩人の皆さんに、タメ口などいけませんよ」
皆はムルルを目を丸くして見ていた。丁度ソウマが食べ終わった時、ドアが開く音がした。ソウマが玄関へ向かった。
「すみません、朝早くに」
ギーヨが外れたドアを直していた。
「いえいえ、寧ろ、お手数をおかけしてすみません」
ギーヨは慣れない様子で靴を脱ぎ、中へ入って行った。
子供二人がジャンケンやら腕相撲やらで遊んでいる間、フォニックスはギーヨと話していた。
「有力な情報は得られましたか?」
「はい!たくさん!」
とエントが答えると、ギーヨは立ち上がった。
「申し訳ないんですが、あと十分で会議が始まるんです!さようなら!」
ギーヨは慌ただしく去って行った。
フォニックスはいつも通り任務へ出かけた。
「わぁ、上手です!飲み込みが早いですね!」
その間、ムルルはイネイからあやとりを教わっていた。
「ツーハも出来るもん!」
とツーハもやったが、絡まってしまった。
「なにこれぇ!」
イネイが解きながら、
「ツーハさんは、読書の方が良いですか?」
と言うと、ツーハは目を輝かせた。
「植物図鑑はありますか?」
とムルルが尋ね、イネイが肯定すると、二人は真っ先に図書室へ向かった。
その頃、大事を取って任務を休みにされたレイは自室でベッドに座っていた。誰かと電話しながら。
『珍しいわね、貴方から電話をくれるなんて』
「暇なだけだ。お陰で本業に専念できそうだ」
『そう。頼りにしてるわよ、レイレイ』
「頼りたいなら勝手に頼っておけ。知らせはいつも通りで良いよな?」
『ええ勿論』
そこで電話は切れた。レイの目はあの時の様に漆黒に染まった。しばらくそのまま動かなかったかと思うと、急に立ち上がって紙に何かを書き、鳩に繋いで飛ばした。




