第三部 戦力の分断
マジシャンはその後も、彼らの攻撃の向きを同様に変えてしまった。アイナは弓矢を撃っていたが、
「これじゃあ、埒が開かないけど、どうする?」
とレイに尋ねた。レイが口を開く前に、
「行けると思……います!」
と、ライトが言った。レイはライトを見た。
「……同感だ」
ライトは胸を撫で下ろした。
「でも、どうするの?ムルルのシールドでなんとかなってるけど、こっちに攻撃が跳ね返って来るのは危ないし……」
そう言うアイナにレイは、
「お前なら危なげなく攻撃出来るだろう。それに、フォニックスが口外しようとすれば―」
レイの瞳が漆黒に染まった。
「k「分かった!分かったよ!」
レイの言葉をアインが掻き消し、彼女は上着を脱いだ。現れたのは、ピンクベースの『アイドルの服』だった。フウワは目を丸くした。
「あの、バトルプリンセスの!」
アイナはいつの間にか構えており、フウワにウインクした。
「届け!私の愛!フォーリングラブ!」
マジシャンは当然跳ね返したが、矢は消滅した。
「こんなものが効くとでも?やっぱり随分と舐められている様だね」
彼は、轟音と共に手のひらサイズの球を作った。そして、それを地面にぶつけた。
「百鬼夜行」
皆は飛ばされてしまい、結界により近付け無くなっていた。アインは、辺りを必死の形相で見回していた。
「姉さんと、レイさんがいない」
皆は結界をぐるりと回ってみたが、隙間も無かった。
「……一体、どうやってこんな結界を張ったんだ?そんな暇は無かった筈……」
フウワは結界に触りながら話す。
「やれやれ、残ったのはお前だけか」
レイとスインは一緒にマジシャンと向かい合っていた。
「そうみたいやな」
マジシャンは笑い出した。
「君たちはもう助けを呼べないよ。周りには結界が張ってある」
レイは冷静だった。
「それがどうした」
マジシャンはレイに向かって先程の技を当てた。スインはその隙に隠れたのか、見当たらなかった。
「この程度か?避けるまでもない」
しかし、レイは平然としていた。服はボロボロだが。
「じゃあ、中気ぐらいは、出そうかな?」
そんなやり取りがなされる中、スインも結界の果てまで来ていた。
「多分、これはマジシャンがやっとらん。みんなが飛ばされた時点では、マジシャンはまだ攻撃の体勢やった……。裏切り者がおるんか?でもそうせんと辻褄が合わん……」
「姉さん!」
丁度、アインもやって来ていた。
「無事?」
「大丈夫や。レイさんが戦っとる。それより、伝えたい事があるんよ」




