第二部 お目当ての人
その後、ハクムに言われた通りに歩くと、三人がドアの前で待っていた。その中の一人はアイナで、三人共同じ上着を着ていた。どうやら制服の様だ。
「レイさんだぁぁぁぁ!」
と叫ぶエントの視線の先は、三人のうちすらっとした背格好の男だった。
「……邪魔はするなよ」
と言っただけだった。しかし、エントは嬉しそうだった。アイナが男の肩を掴む。
「これはレイです。とても失礼な奴で失礼しました」
レイはアイナの手をどける。
「これとはなんだ」
最後の一人、まだ幼い少年はただフォニックスたちを見ていただけだったが、アイナが反対側の手で彼の肩も掴む。
「この子はムルルです。シャイだけど、植物には誰よりも詳しいです」
半分敬語が取れかけているが、誰もそこは指摘しなかった。アイナは二人にお辞儀させた。
「おい、勝手なことをするな」
レイはアイナを睨んだが、そのまま出発する事になった。
「寒っ。山の上に行くなんてな……」
彼らは雪山を登っていた。ライトは上着を着ていたが、それでも寒そうだった。ソウマはもっと着込んでいたが。
「そう?むしろ快適じゃん」
アインは元気よく歩いていた。
「俺もそんなに寒くないぞ?」
エントに関しては気温などさして重要ではないらしい。
「あっ!」
しかし、ソウマは見慣れない植物を見るとすぐに元気になった。ソウマがエントに引きづられているのを、ムルルは見ていた。アイナはムルルに話しかける。
「彼が気になるの?」
「……別に」
「着いたぞ」
レイがそう言うと、遠くに人が見え、妖気も感じた。
「気が早いよ!もうちょいあるじゃん!」
とアインは言うが、
「馬鹿言え。向こうの妖気が分かったという事は、向こう側もこちらに気づいているという事だ。戦いは既に始まっている」
「そういう事じゃないの!」
というやり取りをしていると、人影が一瞬でこちらに来た。
「ふっ。今日は思ったより多いみたいだ。僕のマジックを、お楽しみあれ」
レイは冷静だった。
「ブラックスか。最近増えたな」
三人はアイコンタクトを取り、即座に位置を移動した。レイはその人に攻撃を仕掛けて行く。
「君、首輪が二個も付いているじゃないか。結構あれな感じ?」
二人は戦いながら話すくらいの余裕がお互いにある様で、自称マジシャンはレイに話しかけた。
「これは自分で付けた物だ」
「ふぅん。舐められてるって事か」
「そうだな」
二人はぶつかり合った……が、レイがアイナの近くに来ていた。
「これが僕のマジックさ」




