第五部 光狐の事情
コウが玄関掃除をしていると、扉が開いた。
「ん?依頼か?」
しかし、現れたのはツーハとシャラトだった。ツーハは俯きながら歩いており、シャラトも冷たい目をしていた。
「どうした?」
シャラトは口を開き、淡々と説明した。
「光狐って実は二つの派閥に別れててさ。一つは僕らみたいな普通の人。でも、もう一つは過激派。好戦的で、見境なく戦いを仕掛けていく。光逆戦争を起こしたのもこっちだ」
シャラトの目にコウが映る。
「光逆戦争後の処刑で、随分数が減って勢いも無かった。……最近まではね。闇狐の過激派と手を組んだんだ。こっちも闇逆戦争で勢いが無くなっていたから、利害の一致、って所じゃないかな」
その時、丁度図書室から戻って来たスインが廊下を歩いており、見つかる前に立ち止まって隠れた。
「それからどんどん当時の勢いを取り戻して行ったみたいで。でも、こちら側としては他国に迷惑かける様な戦争は避けたい訳。今、こちら側も抑制に乗り出してる。子供は一旦、安全確保のために避難、って事になったんだ」
「つまり、お前らは俺らの所にちょっとの間住みに来たって事か?」
シャラトの鋭い目の光を見て、コウは尋ねる。
「姉さんは預けるよ。でも、僕は、戦いたいんだ」
コウは頷く。
「そんなこったろうと思った」
シャラトは目を丸くする。
「だって、あいつらと半分一緒な奴の考えなんて、大体分かるだろ」
シャラトは溜息を吐いた。
「ちょっと悔しいけど、そうかもね。僕は過激派に潜入してみるよ。姉さん、次会うのは、屋敷かもね」
ツーハは下唇を噛みながら頷いた。シャラトは扉を開けた。
「じゃあ、どうしようもなく馬鹿で食いしん坊な……姉をよろしくお願いします」
コウも頷いた。シャラトは右手を挙げて去って行った。
「……という訳で、ツーハが住む事になったのか」
夕食、皆が同じ食卓を囲む中、フウワが言った。
「正月の時は普通だったのにな」
とエントも言う。ちなみに、当の本人は見ていて清々しい程の勢いでご飯を食べていた。
「……ちゃんと、止めれるん……だよね?」
アインはボソッと呟いた。フォークを持つ手が僅かながら震えていた。
「大丈夫だ」
ライトが言った。皆の視線が彼に集まる。
「仮に、戦争になりそうになったとしても……俺らが、全力で止めりゃあいい。戦士ってその為にあるんだろ?」
フウワは僅かに微笑んだ。
「お前の楽観さは、ある意味尊敬する」
スインは左手でアインの頭を撫でた。
「やめてよ!」
皆が笑顔になった、良い夜だった。




