第二部 徐々に動きが
死人の間を潜り抜けて走っていくライトだったが、全方位から彼らの手が伸びて来た。ライトはとにかく速く走ろうとするが、前方を塞がれ立ち止まる事を余儀なくされようとしていた。
「止まるな!」
ライトの周りの死人たちは蹴散らされた。そこには赤い目をしたソウマがいた。ライトは再び全速力で走り出した。しかし、勿論扉の前は死人が密集しており、流石にライトは立ち止まった。
(どうする?考えてる時間はないぞ)
ライトは一歩退がりかけて、やめた。
(いや、違う)
逆に大きく一歩を踏み出した。バリバリ、と火花が散った。
(俺のやる事は、考える事じゃない)
一瞬にして、ライトは死人たちの中へ突っ込んで行った。
(走る事だ!)
「どけーーーー!」
一方、レッドはふらついていた。
『すまん、俺も限界のようだ』
『ありがとう。休ませて貰っただけ十分だよ』
瞬時にグレーの方に入れ替わった。
『ダイジョウブ?』
「大丈夫。ライト君はやってくれるよ」
『ソウ』
「あ、そうそう、科学者、追いかけなきゃ」
『タシカニ』
二人は科学者を探しに走って行った。
猫の国のとある病院に、三人は行っていた。
「大丈夫……なんですよね?」
とアインが椅子に座って足を振り子の様に振っていると、立って壁に寄りかかっていたギーヨが答える。
「大丈夫です。彼は一風変わっていますが、僕が知る限りでは一番の名医です」
「……」
「……それでも、不安にはなりますよね」
「……はい……」
その時、隣の部屋のドアが開いた。すると、大きな牙を見せてニィと笑っており、目をギョロリと大きく開いている医者が出てきた。ギーヨは驚きもせず話しかける。
「どうですか?」
「とんでもねェ握力のヤツにやられたモンだねェ。ワッチにかかりゃあそんなの一週間で治せるがな。ギーヨ様の姉御さんに傷跡つけたら大惨事だぜェ?」
ギーヨは、姉御……と小さく繰り返したが、
「ありがとうございます」
と言った。アインも同様にした。彼が去ると、アインは溜息を吐いた。
「良かったですね」
「はい。確かに変わってましたね」
「ですね。彼はカブラさんという方でして。『速く傷跡を残さず治す医者』として有名です」
アインはくすっと笑った。
「すみません。姉御って……」
アインはしばらく笑い続けていた。
「アインさん……」
ギーヨはほんのり顔を赤くしていた。そんな中、偶然通りかかった看護師が
「すみません。うちの医者がご無礼を」
と誤って来たが、ギーヨは別に咎めなかった。