第四部 一気に悪化する状況
フウワが扉の場所の近くまで来ると、技や武器がぶつかる音や、ベキベキと木が倒れる音などが聞こえてきた。
「嫌な勘が当たったな」
フウワは流石にライトのスピードに合わせる事は出来なかったが、普通の人ではあり得ない速さで走っていた。ライトは既に見えなくなっている。
(霊気も強くなっている上、数が増えている……?まさか、死人が……)
フウワはより一層スピードを上げた。
一方、ライトは扉の前で起こっている事を目の当たりにし、立ち尽くしていた。
(嘘だろ……。機械は止めた筈なのに……)
扉の隙間から、死人が次々と出て来ていた。彼らは狂った様に同じ言葉を発し続け、残っていた皆を攻撃していた。
『あ、ああ、あああ、ああああ』
『いっしょ、いっしょ、いっしょ』
『いかないで、いかないで、いかないで』
皆は精神的にも相当苦しんでいる様だった。
(ソウマ……)
中でも、ソウマは木にもたれかかっていた。
「大丈夫か?」
ライトは一瞬でソウマの元へ行った。
「……うん、ごめん、ちょっと、頭痛くなっただけ。……情け無いよね。みんな頑張ってるのに」
ソウマは立ち上がろうとするが、ライトはじっと見つめた。
「違うだろ?ソウマは頭痛いくらいで戦うのを止めたりしない」
「……」
「体が鈍ってるのか?」
「ううん。なんか、全員って訳じゃ無いんだけど、一部の人と目が合うとね、その人の記憶が、全部流れ込んで来るんだ」
ソウマは拳を強く握り締める。
「……それが、凄く鮮明で。自分が体験したみたいに」
ライトはソウマの頭に手を置いた。
「じゃあ、無理するな。俺がソウマの分まで頑張れば良いんだろ?」
「でも「良いって。トルキの時のお礼って事にしとけば良いだろ?」
ライトは戦場へ向かって行った。
一方、スインは反対に、建物へと戻って行った。
(一回、クレバーにならなあかん。そもそも、なんであいつがおるんや?刑務所行きや無かったんか?)
スインは蛇の科学者を、透明になりながら慎重に探す。
(機械直しとるんやろうか)
案の定、機械を直すのに必死になっていた。
「これで良いだろう」
(もう直したん!?いくらなんでも早過ぎるやろ!)
「壊されたのがこっちで良かったな。お陰で扉は開いた様だ」
(機械、二つ以上はあるんやな……)
「さぁ、俺以外の生物は全て焼き払ってしまえ、“ソウマ”」
スインは目を見開く。更に、何処からか死人が現れた。
『メイレイ、スイコウ』
ソウマ?は見えない筈のスインの方を向いた。
『ジャマ、キエテ』