第四部 強く生きる者たち
結局、フォニックスの本拠地にそのまま泊まったギーヨだった。
翌朝、テルルは皆に小さな荷物を纏めて貰った。
「いっぱいあるけど、これで全部やろか」
しかし、スインの言う様に、ぬいぐるみの数は尋常では無かった。あらゆる荷物を足してもそれらの方が多い程に。
「姉さんがお買い物に行く度に買ってあげてたからでしょ」
とアインは呆れていた。
「うん」
テルルはああ言いつつも、やはり終始俯いたままだった。
「もっとちゃんとしろや」
一方で、フウワはバッサリと切り捨ててしまった。皆は慌ててテルルを見た。
「……」
しかし、テルルは泣かなかった。むしろ極端に胸を張り、皆の顔を見上げた。
「ばいばい」
ツーハも、
「バイバイ」
と返した。ライトはそんな二人に言った。
「こう言う時には、『またな』って言うんだ。そうすりゃ、また会えるからな!」
二人は顔を見合わせ、にっと笑った。
「またね!」
「またな!」
その後もそれぞれに別れの挨拶をし、テルルはギーヨに手を繋いで貰いながら去って行った。ツーハは曲がり角で見えなくなるまで手を振り続けた。
十分程歩いた時、テルルの歩いた道にはポツポツシミが出来ていた。ギーヨはテルルをあえて見なかった。テルルのしゃくり上げる声だけが響いていた、静かな朝だった。
「さて、俺も帰るとするか。世話になった」
気付けば、フェルクもカバンを持っていた。
「フェル君もおらんくなるんかぁ。寂しくなるなぁ」
「だーかーらー!フェル君は駄目だ!」
ムキになるフェルクがよっぽど面白かったのか、エントもからかい始める。
「もう大きいのにそんなので怒るのかよー。まだまだ子供だなぁ、フェル君よぉ」
「うっせ!」
しかし、大声で叫び過ぎた様だ。ご近所のお母様が鬼の様な形相で現れ、フェルクは土下座をする羽目になった。主婦の睡眠を妨害した罪は重かった様だ。
「またな、フォニックス」
なんやかんやあったものの、結局、フェルクも去って行った。
「私も、いつかは出て行く事になるんでしょうけど。とにかく!頑張ります!おっしゃ!廊下三周!」
カルロウはやけにやる気になった。元々そうではあるが。
「三周するぐらいなら、任務手伝ってやってくれ。一周でいい」
「そうでしたか!すんません!ライトさん!どうですか!」
そんなカルロウを見ながら、フウワはテーブルで頬杖をついていた。
「どうしたの?」
とソウマが話しかけると、ぶるんと大きく振動してソウマを驚かせたのだった。
「す、すまん……」