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第三部 テルルと

 「では、お話をさせて頂きますね」

テルルとアインの間に座っていたギーヨは、テルルに話しかけた。テルルは限界まで首を傾げさせながらギーヨを見上げた。ギーヨは一瞬上を見た後、

「テルルさん。ご家族が、見つかりました」

とゆっくり言った。その様子を見たアインは、小さく笑って

「ギーヨ様、そんなに気を付けなくても伝わりますよ」

と言った。ギーヨは

「そうですか」

と言いながらも尻尾はピンと立っていた。

「ここの皆さんとお別れになりますが、新しい家に行きますか?」

「おわ……かれ?」

「はい」

「ツーハとも……?」

「はい」

テルルは目に涙を溜めながらも頷いた。

「良いんですか?」

テルルは何度も何度も頷いた。その様子に、ライトは

「しっかりしてんなぁ」

と呟いていた。

「アロさん、ずーんってなってた」

エントは思った。

(ずーんってなんだろ)

「たぶんえんえんしてた」

フウワは、

(やっぱ聞こえてたか……すまんアロ……さん)

と本名を忘れながら心の中で謝った。

「テルル、バイバイしても、みんないっしょ!ずーんってえんえんってなる!」

「立派ですね、テルルさん。言葉はフウワさんに習ったのですか?」

「うん!」

「向こうはセレンというお姉さんがいて、ずっと妹が欲しかったそうです。それに、割と良い所のお嬢様なので、暮らしに困る事はないでしょう」

(ギーヨ様基準の良い所って相当なのでは……?)

と大人達は思った。

「出発はいつに?」

「なるべく早くと言われていますが、流石に明日は無理ですよね?」

「テルルいく!」

フウワは

(名残惜しさは、こっちの方が大きかったりしてな)

とテルルの様子を見て思った。

「よっしゃ、じゃあ、今日はちょっと気合い入れるか」

とコウが袖をまくる。ギーヨは

「どんな料理ですか?」

と翳りのない目で言ったが、コウは真っ青になった。

「多分ギーヨ様のいつもよりショボイと思う……ます」

(危ねぇぇぇ!)

コウは慌てて厨房へ向かった。

「たまには普通の食事を知る事も大切だと思ったのですが……」

とギーヨはコウが去って行く様を見ていた。

「ギーヨ様、ガッカリするだけですよ」

とアインがギーヨに向かって溜め息混じりに言った。

「タツクリとやらは美味しかったですよ?」

「あれは年に一度作るものです。ギーヨ様も、猫なんですね」

「?」

「いえ、なんでも」

「じゃあ、帰ります……」

とトボトボ帰ろうとしたが、漂って来た焼き魚の匂いに思わず足を止めて戻って来てしまったギーヨだった。

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