第五部 隠された真実の断片
遂に、フェルクは炎の玉をエントに投げつけた。エントはそれを避けると、フェルクを見たまま固まった。フェルクもそんなエントを見て固まってしまった。依然降り続く雨が、二人の顔を濡らしていく。しかし、それを踏まえたとしても滴り落ちる水滴の量は多すぎた。
「フェ、ルク……お前……」
「ごめん……ごめん、なさい……」
互いにそれ以上話さなくなってしまい、周りの者も流石に心配し始めた時だった。何処かから、声が聞こえて来た。
『やーれやれ。やっぱりまだ早かったかなー?でも、もう後には退けないよね。最悪、“壊れちゃってもいい”訳だし。そんなに強い訳じゃ無いからなぁ。さ、お願いねー』
フェルクから表情が消えた。そして、急にエントに跳びかかって来た。エントはスレスレで避けるが、フェルクは着地と同時に再び跳び上がった。フェルクは一瞬顔をしかめたが、すぐに虚無の表情に戻った。
(壊れるって、そういう事かよ)
エントは腕を掴まれてしまった。そして、そのまま腹に蹴りを入れられた。
「ぐっ……」
それだけでは済まなかった。フェルクは腕を離し、エントをデッキから落とした。エントは先程のダメージでまともに動く事すらままなら無かった。
(やべぇ……このまま……落ち
フェルクはデッキの中央に立っていた。未だ虚無の表情は変わら無かった。フェルクはフラフラと歩き、中に戻ろうとした……が、何かがデッキに着地したのを見て足を止めた。
『来ちゃったかー。残念だな。エント君消せなくて』
そこには、大きな鳥と、エントをおぶっているスインがいた。エントは気絶していた。
「危なかったなぁ。まぁ、安心しいや。従兄弟君は、取り返すから」
スインはかつて狙撃手に対して見せたあの目になった。フェルクはスインにも同様にするが、スインは水をぶつけて阻止した。
「おんなじの通用する程、私は甘ないで」
フェルクはそれでも突進して来るので、スインは水の弾丸をフェルクの赤い耳に、僅かに掠らせた。
「こんぐらい、私にだって出来るで。一見分からんやろ」
謎の声はそれきり聞こえなくなり、フェルクは気絶していた。
「困ったなぁ。流石のカァちゃんでも三人は無理やんなぁ」
鳥がグガァ、と答える。
「ええよ、無理せんといて。カァちゃんはもう帰ってええで。みんなにバレるとあかんし」
鳥は何処かに飛び去って行った。
「普通に説明せななぁ」
スインは電話をかけた。
「もしもし、ギルド様?いやぁ、二人で謎の飛行船に連れ去られてしまいまして