第五部 コウの仕事始め
一同が本拠地に着くと、コウは掃除用具箱から箒を取り出し、早速掃除をし始めた。さらに、分身によって一気に色々な所を綺麗にして行った。案外綺麗好きなフウワがこまめに掃除していたのだが、それでも薄汚れていた室内が見る間に綺麗になって行く。その働きぶりにソウマも満足そうだった。その時、ツーハの腹の虫が鳴った。
「おなかすいた。らいにい、ごはんない?」
「兄妹って似るものなんだな……。飯は今まで買って来た奴で済ませてたんだが、今日は違うかもしれないな」
ライトは台所で調理をしている二人の草狐に目を向けた。スインもエプロン片手に手伝いに行った。アインは少し忙しそうで、フウワはコウの分身に掃除を教えていた。
「すぐできる?」
「まだ十時半だ。我慢しろ」
ツーハははぁいと返事をしただけで、文句は言わなかった。
「おーい!兄者ー!誰か来たぞー!」
エントがやって来た。ライトは面倒そうに答える。
「お前が出れば良いだろ?」
「企業の宣伝だったらどうするんだよ。俺そういうの誤魔化してまくの苦手なんだよ。兄者は得意だろ?」
「得意な訳じゃない」
そう言いながらもドアを開けたライトは、目の前の人物を見て驚いた。
「あれ?シャラトじゃねぇか!久しぶりだな!」
ライトはその人物の頭をツーハと同じ様に撫でた。シャラトと呼ばれたのはツーハにそっくりで刈り上げが控えめなメリハリワイルドショートの少年だった。しかし、目の色だけは薄紫であった。シャラトはあくまで冷静にライトの手をどけた。
「兄さん。僕は姉と違ってもう頭を撫でられて喜ぶような子供じゃ無い。今日はその姉を連れ戻しに来たんだよ。全く、すぐ出て行くんだから。割を食うのは僕なのにね」
「まぁまぁ。せめて昼飯までごめんしてやってくれないか?シャラトも食べて行けば良いだろ?」
シャラトはため息をついた。なんと対照的な姉弟だろうか。
「そこまで言うならいてもいいけど?その代わり、今年の正月はきちんと来てよね」
その一言にライトは嫌そうな顔をしたが、すぐにいつもの顔に戻り、シャラトを招き入れた。丁度出来上がった様で、食卓に中々美味しそうな料理が並んでいた。その後、米を炊き直しを余儀無くされる程大量に食べフォニックスの財布を圧迫したツーハはシャラトに手を引かれながら帰っていった。コウは皿洗いをし始めていた。一同は中々に広い中庭を使って日課の特訓を始めた。最も、六人で使うと狭いので三人ずつの利用だが。
キャラクター設定① ライト
このコーナーではキャラクターを作った時の設定などを紹介します。
ライトは正に主人公、というキャラクターにすることを意識しました。明るくて優しい、良い事を言う。
一番自分の期待通りになってくれたキャラクターだと思っています。