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26.5 リアナのいないローレンス城


「……よいのですか、旦那様。奥様に何も言わず騙すような真似をして」


セバスチャンは、責めるというよりも心配した表情で主を見る。

そう問われたヴェールは、感情のままの言葉を出すまいと唇を噛んで暫く考えてから口を開いた。


「いいんだ。理由を話せばリアナは何が何でも此処を離れようとしないだろうからな」


自ら下した決断に後悔はなくとも辛くはあるのか、ヴェールは何度も深い溜息を吐く。

リアナと離れたいわけがない。寧ろ最も離れ難い存在だ。けれど、人生を共に歩むことは出来ないと判断した。


「リアナ様以上の方は現れませんよ」

「……分かっている。もういい。相手に望むことは、ローレンス家の血を絶やさないことだけでいい。息子への愛は私が注ぐ」


憔悴しきった様子のヴェールを見て、セバスチャンも同じように項垂れる。

この城の長い冬を終わらせ、当主に、使用人たちに春をもたらしたエドワーズ家の四女リアナ。

不吉で呪われていると言われる赤い目を持ち、暗い生い立ちを持ちながら決してそれを感じさせない明るさと快活さのある聡明な女性。

浄化の際に異形に変化する当主の姿を見ても目を逸らさず、果敢に立ち向かう姿は後世まで語り継がれる大勇と評されていた。

きっとそう遠くない未来でかわいい男の子を生み、ローレンス家の運命に寄り添いながら生きてくれると誰もが思っていた。


「彼女は私の望む以上のものを与えてくれようとした。だが、受け取ることは出来ない」

「リアナ様の幸せはご実家にはなさそうですが」

「それでもだ」


それでもここに居るよりはいい。と、かすれた声でヴェールが言うのでセバスチャンはそれ以上何も言えなかった。


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