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神装巫女  作者: みけさんば
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6話 夕日のように、影が差す ①

 神装を纏い、私は助けが呼ばれた場所に走った。

 目的地にたどり着くと私は物陰に潜み、息を殺して現状を確認する。


 たどり着いた場所にいたのは、ボロボロの私くらいの女の人。

 物陰にかくれ、潜み、逃げ惑いながら息を荒げていた。

 そして、もう一人いる。

 瓦礫の中、土煙の中で、橙色の光の灯る女の子。

 レイちゃんと同じくらいか、少し幼く見える女の子。


 こんな小さな女の子まで、私達を殺しているのか……幼い体で、そこまでする理由は何だろう。

 きっと、理由があるはずだ。あの娘の理由は、何だろう。誰のために、何のために、あの娘は戦っているのだろうか……


 彼女の神装は、少しばかり奇妙だ。

 三つ、くさび形の漆黒の鉄の塊が、少女の周囲に浮いていた。

 代わりに、両腕が完全になくなっていて、長い藍色のボディースーツの袖がふわふわと風に揺られている。

 装甲は一切なく、かわりというにはあまりにも貧相な水晶が胸にはめられ夕日のような橙の光を放っていた。


 鉄塊が丁度真ん中で、ワニの口のように真っ二つに開き、光を放ちながらその割れた鉄塊の間で力を貯めていく。

 ビリビリと鳴り響きながら、より強く輝くその鉄塊から光が束となって放たれた。


 舞う砂埃、襲う熱波。蒸発する瓦礫達。

 振り向くと、穴の開いたマンションが私の目に映る。

 私は息を殺して隠れながら、その光を見つめていた。

 光は少しずつ方向を変え、車のワイパーのように全てを真っさらに変えていく。


 無差別に全てをなぎ払う光。

 この光から、助けないと。

 逃げていた少女に向かい駆けだし、その体を掴む。

 そして跳びあがって光の束を飛び越えた。

「チッ!お邪魔虫め……」

 レイちゃんとは真逆の荒々しい言動で、光を放つ少女は悪態をつく。


 傷ついた少女の体を掴み、物陰に隠れながら私は走り、近くの病院に逃げ込んだ。


 私はそして、病院の床を切り裂く。

 穴を開け、私はそこに隠った。

「ありがとう……助かったよ。でも、怖かった……」

 私が助けた女の子が、汗だく、傷だらけの体で他チアがる。霞んだ声で、元気なふりをしながら話す。

「……うちは小浪楓(こなみふう)。はじめまして、だよね。えっと……」

「鳩羽湊。よろしくね!」

 楓が戸惑う表情をしていたから、安心させたくて明るく振る舞った。


 楓の神装は、深い緑だ。

 ボディースーツも、鎧も。

 足は頑丈に、ぶ厚く太い鎧で守られている。

 末広がりのその足は、ロボアニメのロボの脚部にもにている。

 対照的に、腕に鎧がついているのは前腕のみ。

 二の腕と手には鎧はなく、代わりに手袋がはめられている。

 前腕の鎧の先には、三つの穴が開いていた。

 首には、太い縄が巻かれている。縄に関係する能力なのかな?


「なあ、湊とやら。あれはなんなんだい?

 急に襲い掛かってきてわけわからないんだけど……」

 楓の首を巻く縄のような物から、声が聞こえた。

「あいつが誰なのかは、わからんが……何なのかは、少しだけわかる。魂が……ほしいそうだ」

 タケルさんが返答すると、楓はすこし戸惑いからも私には聞く。

「ならさ、湊達はあの娘をどうする気なの?」


 私は、右手を握りしめる。

「止めたい。そして事情を聞きたい。なんで戦うのか……話を聞きたい。それが、もし別の方法でなんとかできるなら……手伝いたい」

「それなら、うちも手伝うよ」

 楓が、その傷ついた体で真剣に言う。

 その目は私を突きさすように鋭く光っていた。


「危ないよ。私は、あなたを助けに来たんだ。

 だから、はやく元の世界に帰って」

 なだめるように言ったつもりだった。

 だが、言葉の端が強くなる。私はできるかぎり多くの人を守りたい。

「なら、湊も危ないよ。二人でなら、危なさは二分の一。でしょ?」


 楓の言葉に首を振る。

 だが、楓は譲らない。

「うちにも戦わせて。私、強くなりたいから……親友との、約束のために」

 私と同じだ……一瞬、私はそう思った。


「親友との、約束ってなに?」

 私が、そう訪ねた。

 訪ねてしまった。考えるより先に、聞きたいと思った。


「うち、親友より強くなりたいんだ。そう、約束したから……私、柔道部なんだけどね……子供の頃からずっと、勝てなかった娘がいるんだよ。

 私は悔しくて勝ちたくて、いつか勝つって言ったんだ。そしたら、うちの親友は『待ってる』って笑いかけてくれたから……」

 楓の顔は、柔く笑っている。きっと、それは懐かしむ気持ち。

 楓は、一瞬黙った後、すぐにまた口を開いた。


九條(くじょう)高校、柔道部。『武の心得』その一。『強さとは向き合う力』私は、人を助けるこの使命に向き合って、強くなる」

 その目に淀みはなく、疲れはあれど恐れはない。

 十分すぎるほど、強く見える。

 憧れさえも抱いてしまうほどに、苛烈かつ真っ直ぐに目の前の全てを見つめる目だ。


 だが、より一層引き留めたくなった。

「……それなら、もっと死ねないよ。約束さえ、忘れてしまうかもしれないのにッ!」

 こんな強い人が死んで言い理由なんてあるわけない。

「それは……たぶん湊もだよ。湊はなんで、戦い始めたの?」

 問い詰める楓の目は真剣で、歩み寄る楓の顔は、たくましい。

「親友と、一緒に居続けたくて……その約束のために」

 そう答えた瞬間。楓が私の頬をひっぱたく。

「うちと同じじゃないか……死んで良い人間なんていないんだ。だから、死なないために、二人で戦おう?」


「でも……」

 そう言い淀んでしまう。

 だがそんな私に、楓はゆっくりと、耳に直接入る真っ直ぐな声で言った。

「ねえ、湊の親友って、どんな人なの?」


 そう言われて、私は碧のことを思い出す。昔から、誰にも優しい子だった。だれよりも他人を気遣って、他人のためにできることを考えられる子だった。

 私がいじめられてた時。碧もいじめられたままで、自分が一番苦しいはずなのに私のそばにいてくれた。


 それがとても嬉しくて……私は誰かに寄り添って、誰かを助けられる人でいたいと思った。

 碧のように、なりたいと思った。

 そして同時に、自分よりずっと強い苦しみを背負った碧を、守りたいと思った。

 そうだ、私は碧の隣にいたい。

 碧を助けて、碧を守って、碧を愛していたい。


「優しい子だよ……どんな嫌なやつでも、困ってる人はすぐに助ける。嫌な思いに向き合って、超えていこうと頑張っている、すごい子で……一番自分がつらかったはずなのに、私のとなりにいてくれる」


 そこまで言うと、楓は私をひっぱたく。

「そこまで良い友達がいて、なんでうちだけが死んじゃ駄目みたいなこというかな……死なないために、二人で戦おうよ。お互い死ねない。だからこそ、二人とも生きるために」

「でも……」

 首を振るわけにはいかない。

 誰も死んで欲しくない。危ないことには巻き込めない。


 そう俯いている私の肩に、楓は手をかける。

「二人で生き残るんだ、力を合わせるために、今ここに二人いるんだよ」

 そう言って、楓が神装解除してスマホのQRコードを私に見せた。

「本当に、戦うんだよね」

 その一言の言葉に、楓は何も言わずに首を縦に振る。

 QRコードをスキャンし、私は足を進め始める。

 自分達の頭上で、音が鳴り響いてる。

 堕ちていく瓦礫の音や、蒸発する鉄筋コンクリートの音、私達を狙い、探す音が聞こえてくる。


「さあ、行こう」

 そう、楓に言うと、

「待ってくれ。うちにちょっと考えがあるんだ……」

 そう言って、楓は私を引き留めた。

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