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神装巫女  作者: みけさんば
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3話 剣と剣、遭遇

 この色のない世界で、私は神装を纏う。

 碧の願いを守るために、私は戦うと決めた。

 目の前を覆うのは、巨大な象の化け物。

 その巨大な足が襲いかかる。

 それをかわし私は跳びあがる。


 巨大な象のその体のさらに上。

 高く高く跳びあがった空中で、私は右手を天に掲げる。

 右手が光り輝いて、巨大な刃が現れた。

 巨象の体を真っ二つにするように打ちつけるが……


「刃が、通らない!」

 自分で驚いた。

 力が足りない。

 この象がそれほど堅いのか……それとも……

「神装の出力が低下している。君の心に乱れが生じているようだ。神装はつまり私と君の心を融合させること、今のままでは勝てないぞ!」

 右腕から声が答えを示す。


「……なんで、なんで私が迷ってるの!?」

 戸惑いを隠しきれず、なんどもなんども刀を敵に打ちつける。

「駄目だ、そんな無闇矢鱈では!君のその刃を通すことはできない!」

 その声も耳に入らず、剣を天高く掲げ、精一杯をこめて私は打ちつけた。


「……どうして、どうして!」

 傷一つつかない巨象の背中に、汗をこぼす。

 自分が情けなくてたまらない。

 守ると決めたはずなのに、私はまだ、自らの勝手な想いに振り回されているんだ。


 象が暴れる。

 私は体から振り落とされる。

 真っ逆さまに、落ちていく。

 なんとか体を翻して着地する。

 だが象の足が私を襲いかかる。

 ここで死ぬのか。未練を残して死ぬのか。

 それは嫌だと思いながらも、落下の衝撃で痺れた足が私を押しとどめる。


 勢いよく落とされる足に、死を覚悟した次の瞬間。

 私の神装が、突然解除された。

 ほぼ同時に、象の体が切り裂かれる。

「ヤマトタケルさん……」

 守ってくれたのだ。そういえば、始めてこの世界に入った時もこの人に守られた。


「神装を強制解除して、私の力を使った。神装は私の力を纏うモノ……纏ったままでは力を外に放つことなどできないからな」

 動けない私を助けた恩人は、静かに、だが力強く話し始めた。


「今、君を戦わせるのは、あまりに残酷だ……だが、私独りでは、この世界で戦えない。

 力を貸して……くれないか?少し、考えがあるんだ」

 右腕から鳴る真剣な声に、私は心が動かされる。

「……今の私でも、戦える?」

「ああ。私が、君をサポートする。だから、君がどうしたいか、選べ。私はそれに従おう。君が友のために戦うように、私は君のために君と戦おう!」

 迷い一つないその声に、私は小さく頷いた。

 頭ではわかっている。戦うしかないんだ。

 あんなやつを護れるのか、ずっと想っていた。

 だけど、私は護る。戦うんだ。

 碧が前を見るために。


「私、戦うよ。この力で戦えるかわからないけど……」

「大丈夫だ鳩羽湊。考えがあると言っただろう!」

 私は立ちあがる。

 自信なんてない。それでも、立ちあがる。

 それは、自分が出した答え。嫌がりながらも、苦しみながらも、選んだ答え。


「神装を纏え。そして走れ!」

 右腕が力強く指示をする。

 巨象の体の下を抜け、その身に覆い被さった陰から解放される。


「身を翻して、跳べ!」

 高く、高く跳びあがる。

 その下には、再生済みの象の背中があった。


「神装解除だ!」

 鎧が消え、生身の体が空から落ちる。

 象の背中に叩きつけられそうになった瞬間。

 ヤマトタケルさんの斬撃が、象の背中に深い傷をつけた。


「今だ!」

 私は再度神装を纏う。

 そして、その力で生み出した剣を、先ほどの傷に叩きつける。

 傷が再生する前に、素早く、力強く傷つける。


 象の体は真っ二つ。

 断末魔の悲鳴が辺りに響き渡り、霧となって、消えていった。


「なんとか、終わった……」

 そう言った次の瞬間に、私は背中から視線を感じた。

 振り向くと、そこに居たのは黒い鎧の少女。


 色を覗けば、私と似た鎧を纏っている。

 だが、何もかもが黒く、右の前腕の菱形の模様が黄色く輝いている。

 流線型の多い私の装甲とは対照的に、その神装は直線的でゴツゴツしていた。

 それが、重厚な雰囲気を醸し出している。


 私と同じか、一つ、二つ上くらいの少女が、電柱の上に佇んでいた。

「……誰?」


 私がそう小さく呟くと、黒い鎧の少女は右手でむしり取った電線を剣の形に変え、電柱から飛び降りる。

 舞い散る砂埃の中、私は少女の姿を一瞬見失った。

「鳩羽湊!後ろだ!」

 右腕からの声に従い振り向く。

 その瞬間、少女は電光を纏う斬撃を叩きつけた。

 それをとっさにかわし、私は右手の剣をよりコンパクトに生成し直した。


「君は誰だ!何を求めて私達を切らんとする!」

 ヤマトタケルが問いかける

「私は深山光(みやまひかる)。友の絆に命を賭す者。そしてその想いを世界に刻む、ただ一振りの漆黒の剣ッ!」

 その答えとともに、光と名乗った少女は私に剣を振り下ろす。


 体を大きく揺らして交わすことに精一杯で、反撃はおろかどうすればいいかすらもわからない。

 混乱の中で光の剣もかわしきれず、咄嗟に受け止めるも、力強い光の剣に体を吹き飛ばされた。

 立ちあがろうにも、光の剣から放たれた電撃に、体が麻痺して立ちあがれない。


 近づいていく光に、ボロボロの顔を向けても、光は止まらずこちらに向かう。

 その光の目が、よく見ると少し悲しそうなのは、気のせいだろうか。

「神装を解け」

 右腕の声に従い、自らの神装を解く。

 そして、神の力。斬撃が光を襲った。

「最後の一撃……あたってくれぇッ!」

 胸ポケットのスマホから、鳴り響くのは叫び声にもにた願い。


 砂埃が、舞い上がる。

 私の体は、未だ動かない。

 怖い。今まで覚悟してきたどの死よりも、恐ろしい。

 何故だ。

 まだあの少女が、砂埃の中歩いているからか?

 神装を解き、知らない高校の制服を着て、悪魔のような少女は私の元へゆっくりと足を進める。

「神の力の斬撃を、同じ神の力で相殺したのか……」

 胸から鳴る声が、絶望とも呼べる諦めを感じさせる声で、呟く。


 再度神装を纏った光。

 ゆっくり、ゆっくりと私に近づく足取りは、恐ろしいほど綺麗で、逞しい。

 私ももう一度神装を纏った。

「ここで終わるもんか……」

 動かない体でも、右手だけ、無理矢理伸ばして刀を突きつける。


「……良い気迫だ。だが……お前は不憫だったようだ」

 光はその右腕で、私の剣を強く握りしめる。

 剣は分解され、光の手の中で別の剣と変わっていく。

「……奇妙な力だ。私の力とは似て非なる……その力は何を媒体に発動している?」

 光が私から奪った剣を見ながら問いかけた。

 そして、剣を投げ捨て、私の胸に手を当てる。

 私から奪った剣は霧となって消え去った……


 意識が、薄れていく。

 体の感覚が少しずつなくなっていく。

 私の体が、分解され、再構築されていく。

 胸に当てられた手を、引き剥がそうにもその手はもうない。

 分解されてしまったのだ。


 睨みつけようとその顔を見ると、やはり、その顔は悲しそうにしているんだ。

 涙を流しているわけじゃない。

 なら、なぜそう思うんだろう。

 その目が、自殺寸前の乙女のように潤んで見えるのは、なぜだろう。


 なんで、悲しいのに、苦しいのに、あの娘は戦うの?

 嫌だ。それがわからないまま。

 消えてなくなるのは、嫌だ。

 そう思っても、残酷にも運命は味方せず、意識が消えていく。


 薄れていく中で、私は一瞬、夢を見た気がした。

 病気の友のために、毎日毎日、健気に病院に通う少女の夢。

 なんでもない、普通の少女の夢……


 そんな夢さえ藻屑と消え、私の意識はプツリと途絶えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 臨場感のある戦闘ですね。 読んでいてドキドキします。 そして謎の少女・光、その正体も気になります!
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