最初で最後
初めて書きました。よろしくお願いします
夏
街を歩いていた。太陽に、見下ろされながら。
寒くてもう、頭がおかしくなる。
歩いた。ひたすら。
肩を叩かれた。呼びかけるように、優しく。
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大部屋に円卓が1つ、その周りには椅子が13、その全てが役割をまっとうしていた。
椅子の上にいるやつらはほぼ全員眠っている。
起きているやつらは知り合いなのか、不安そうに話していた。
他のやつらも目を覚ました頃。
『みなさんが起きるまでに、27分ほどかかりました』
厄介教師のような言葉がどこからか聞こえてきた。さすがに驚いて返す言葉がなかった。
『さて、みなさん。あなた達にはこの屋敷で殺し合ってもらいます。デスゲームですね、当然ご褒美は用意しています』
あぁ、そういう系ね。マジ迷惑。
『ただの殺し合いではありません。みなさん、ポケットの中、あるいは鞄の中を探ってください。みなさんのスマホがあるはずです』
確かに、スマホがあった。ただ、俺のじゃない。
画面には0と開始まで30:00と表示されている。
『1時間に1つ、それに加えて殺した人数分、ポイントが入ります。ポイントはそのスマホで使えます。さらに、スマホには生存者・死亡者の表示機能などもあります』
『期間は13日、312時間です。ポイントを使って得た力で、頑張って生き残ってください。30分後にスタートです。なにか質問はありますか』
少し間をおいてから
「どういう事なんですか。誘拐ですよこんなの」
最初に声を出したのはイケメンだった。声から困惑していることがよくわかる。
『確かに誘拐ですが、みなさんはここから出られませんので、ゲームに参加するしかありません』
「あのー、ご褒美って何すか?」
今度は野球部っぽいやつ。アホそうな面してんなー。
危機感を感じていないように見える。
『どんな願いでも叶えてあげます。あの頃に戻りたいとかでもいいですよ。あぁ、それとゲームの中で得た力もそのままで結構です。そのスマホもね』
時間を戻せる?つまり──
「力って何?」
俺がなにか言う前に、被せるように女子が聞いた。めちゃくちゃ食い気味だったぞ。
『超能力です。1人1つまで得られます。他にもう一つありますが、特に言う事はありません。各自でご確認ください』
へぇ、そりゃ心躍るね。周りは微妙な表情をしている。みんな顔に出やすすぎんか?
『質問タイムはここまでにしておきましょう。それではまた312時間後に』
えー?まだ聞きたいことあるんだけど。……まぁいいや。忘れちゃったし。
『あぁ、それとですね。』
なんだ、まだあんのかよ。他もそう思っているらしく、表情がさっきと違う。
『時間切れまでに残りの人数が2人以下でなければ全員殺します。ですので、ペアで行動することをオススメします』
広間が緊張感に包まれ、あっと言う間にペアが出来上がっていく。
まずいな。ペアだと一人残る。しかも、俺以外全員知り合いがいるっぽい。
俺はソロプレイを覚悟したが。
「ね、わたしと組もう」
さっきの食い気味女子が誘ってくれた。
ん?この子、かわいい。
ショートの黒髪で、優しい目をしている。服装は……よくわかんないけど、かわいい感じの服とズボンを着ている。ズボンじゃなくてパンツだっけ。
「ありがとう、助かる」
俺は礼を言った。
「早くここ、見て回ろ」
食い気味女子が言った。確かに、早めに出て周りを確認した方がいい。
後ろから締め落とされる、なんて事も考えたけど、流石に無いか。
俺達はすぐ部屋を出た。とりあえず廊下を右に進みながら
「自己紹介、するね」
彼女が言った。
「わたし、日高明希。明希って呼んで」
「俺は永町裕持。んじゃ明希さん、これからよろしく」
「……うん。よろしくね、裕持」
そう言ってニコリと笑った。あら、かわいい。
少しして、明希さんはスマホを取り出した。
使い方を確認しておくらしい。俺も確認しておく。普通にスワイプしたらなんか出てきた。画面には、参加者リスト・ポイント交換とあった。
まぁ、ポイント交換を見るよな。リスト見ても名前と顔が一致しないし。わお、超能力100ポイントいるじゃん。
心体の強化というのは10ポイントだった。
とりあえず押してみた。説明が出た。
心体の強化
“心身を全体的に強化する。筋力だけでなく、瞬発力や頭の回転などもこれに含まれる。13段階”
ザックリしてんなー。13好きすぎだろ。
あと、すぐに交換しないほうがいい気がする。
突き当りに着いた。前には今まで歩いていてちょこちょこ見た扉、左には廊下が続いていた。俺は扉を開けて入ることにした。
厨房か。結構広めで、部屋の真ん中には長机があった。
ここで飯を食えって事か?冷蔵庫見よっと。
特に食べたい物はなかった。
「なぁ、明希さんはどう思ってんだ?このゲーム。」
俺は明希さんに話しかけた。さっきから暗い顔をしだして気になった。
「最悪」
だよな、と俺は続けて
「マジ迷惑、生き残っても人殺してんだぜ?」
生き残れるのが2人なのは、人を殺した事を共有して、潰れないためなんだと、俺は考えている。
「最初で最後であってほしいよな、こんなの」
色んな意味で。
デスゲームとか、リアルに体験しないほうがよかった。
「ぁ、そうだね」
考え事でよく聞いていなかったみたいだ。少し驚いた顔をしている。
「考え事してんの?」
「うん、そうだよ。ね、早く他のとこ回ろ」
ふーん。家族とか友達のこと考えてたのかな。
その後、屋敷全体を回ってわかったのは、ほとんどの部屋の内装と間取りが左右対称になっている事。屋敷は2階ある事だった。
俺達は、最初の部屋のすぐ隣の部屋で待機している。明希さんがここを強く推したからだ。
灯台下暗しみたいなのを狙ってんのかなぁ。
開始まで、あとほんの少しだ。
「裕持。始まる前に厨房からなにか取りに行こ」
俺がなんとなく緊張を感じていら、明希さんが提案をしてきた。厨房は食べ物が置いてあるので、安全な内にそれを取っておくつもりらしい。
もちろん、協力する。食べ物がなけりゃ13日も生きれないし、厨房は1つしか無かった。他のやつらに鉢合わせたり独占されたらまずい。これには悪意しか感じない。
厨房は部屋を出て右の突き当たりにあるので、すぐに着く。水の入ったペットボトルとか、日持ちしそうなもんを急いで運んでおいた。4日分も運べなかったけど。
ついに、開始してしまった。
開始までの時間は、残り時間に変化して、1分ずつ時を刻んでいる。
とはいっても、廊下に人の気配は一切しなかった。
そのため、あと10時間くらいは大丈夫なんじゃないかという話になって、明希さんと話をしていた。
一応、警戒はしている。
「裕持ってさ、何歳?わたし17」
「俺も17。」
「そっか、一緒だね」
と言って、笑った。
うわぁ、かわいいかよ。
「裕持。生き残ったら、何お願いする?」
「そりゃあ、もちろん──」
その後も、廊下の音に気をつけながら、他愛のない話をしていた。
足音がした。
明希さんも気づいたみたいだったので、音を立てないようにゆっくり扉を開けた。
廊下には、ビクビクしている男子が1人。包丁を持っている。他には誰もいないようで、キョロキョロと周りを気にしている。
俺達は今、ドアを開けて覗いている。当然バレた。
「あ、バレたよ」
そう言った明希に押されて廊下に出た。ビクビクしてたやつは、心底驚いた顔をして、
「う、うわぁあぁぁぁぁ!!」
包丁を構え、叫びながら突撃してきた。
俺はとっさに、飾られている壷を投げつけた。
バリンッと音がして、見てみると、あいつは頭から血を流して倒れていた。頭を打って気絶したみたいだ。
「頭に直撃だったよ。すごいね裕持!」
明希は、ズレてるというか、テンションおかしい。
俺は倒れているやつに近づき落ちていた包丁を拾った。明希も何をするかわかったようで、黙って頷き「頑張って」と言った。
大丈夫。これからするのはこういうことだ。やらなきゃ死ぬ。絶対に出来なきゃいけない。殺らなきゃ、殺られる。帰れなくなる。
──覚悟を、決めて。
俺は、この男子の首目掛けて、包丁を振り下ろした。
「っ!……」
首を突き刺した。包丁を抜いたためか、赤黒い血が溢れ始めた。
手に上手く力が入らない。体が震えている。
「裕持。お疲れ様」
明希は、どうしてさっきと変わらないのか。分からない。今も遺体から血が溢れ出しているのに。
「大丈夫?部屋に戻ろ?」
「大丈夫。早く、戻ろう」
優しくかけられた言葉にそう返して。
俺は、まだ握っている包丁を見つめた。
赤黒く、汚れていた。
次から恋愛っぽくなるハズです。




