episode 2 -5 憑依は、ほどほどに
病室に入った華は、千佳に近づいてそっと眉間に印を施した。夢に入った時に見つけるための記だ。夢の中で確実に本人と交渉するためにも必要となる。
「さてと…。印は、これで良し。後は、そのゲームがどのような物か確認してみましょう。」
「ここでですか?ええ。海野さん。千佳さんの性格とか伺いながらゲームをしてみます。」
「ゲームをするんですか?」
依頼者は、キョトンとした顔で華の顔を覗き込んで聞き返した。
「海野さん。多分、千佳さんは、夢の中でゲームの世界の誰かに憑依したと思い込んでいるんじゃないかと」
「じゃあ。千佳は、その世界の住人になって生きていると思い込んで、目覚めないという事ですか?」
「おそらく。簡単にその夢自体を喰うこともできますがそうすると、千佳さんが一緒に消滅する可能性もありますからね。なので、ゲームの中の誰になりたそうなのか見つけて、まず、千佳さん自身に気づかせないと始まりません。」
「そんなことになってるなんて・・・。」
華と依頼者は、病室で千佳の携帯からゲームを起動させてみることにした。
ゲームの内容は、よくあるロールプレイングで、パーティーを組んで冒険し宝石を集めたりモンスターを育成し最終的には、旅の途中で家族も作れるという展開のようだがデータが事故の影響で削除されゲーム自体がどこまで進んでいるのか分からなかった。
「データが消えていますから。最初からですね。」
「多分、勇者じゃなくてこの魔法使いの方…これになっているんじゃないかしら。昔から魔法が使ってみたいと言ってあこがれていたし…。」
「良かった。そういうところが知りたかったところです。では、この魔法使いに検討をつけて千佳さんを探してきます。とりあえず、この携帯は、依頼が完了するまでは、お預かりします。それと、この病室に海野さんは泊りで付き添えますか?」
「ええ。」
「では、今晩は、付き添ってください。千佳さんに異変が有れば声を掛けて呼んでください。」
「分かりました。やってみます。」
華は、病室を後にしてから、獏を呼び出した。
「おおい。獏くん。足取りはつかめそうだ。今晩、行こうか?」
「いちいち呼び出すな。華。仕事の前だけで充分だ。」
「まあ。そういわずに。」
「一つ聞くが?対価は、どちらからもらうんだ華?」
「うーん。本来は依頼者だけどね。でも、夢を喰う方だな。天からの預かり物の体を放棄した罰は報いないといけないからね。」
「そうか…。依頼者が納得するのか?」
「それは、関係ない。理の方が重要だ。それに、今回は、閻羅様も絡んでいるから余計にね。もしかすると…。」
「なんだ?」
「閻羅様がお出ましになるかもしれない。」
「うっそれは、遠慮したいがな…。」
「だよね…。」