episode 2 -4 憑依は、ほどほどに
「娘の名前は、千佳です。」
「普段の呼び方は、そのまま『ちか』ですか?それとも何かちゃん付けで呼んだりしますか?」
「いいえ。呼び捨てです。」
「分かりました。では、携帯のパスワードは、分かりますか?事故の時、何を見ていたか確認したいのですが?」
「パスワード・・・親子でも、教えてもらえなくて・・・。どうしたら良いでしょう?千佳さんの携帯の名義は?」
「私です。娘が高校生の時に買ったので、私が契約者です。」
「それなら、大丈夫です。携帯会社に行ってロック解除してもらってください。明日、千佳さんの病院の前で待ち合せましょう。良いですか?」
「はい!!」
華は、依頼者から対象者の入院先を聞き待ち合わせをして、その場を離れることにした。
「海野さん。早く帰ってひと眠りしてください。明日、会いましょう。」
依頼者は、深々と頭を下げ足早にその場を去って行った。
「さて、獏くん。我々も帰って寝るとしますか・・・。」
「あほか?もう一件依頼が来てただろう。」
「うわっ。忘れてた。とっとと喰って帰ろう!!」
「ああ。その後、お前は、学業が待ってるがな・・・。」
「ひえ~!!。いや。休む休んで寝る!!無理無理!!」
依頼者と別れ別件を片付けた華は、結局、学校に行かず昼過ぎまで眠り続けた。夢喰いをする華は、夢を見ることがめったにない。華が夢を見ない様に摩利支天が制御しているからだ。華が夢を見ればその空間は、夢喰いの次元として広がり続けて、華の体力は、起きている時間より消耗してしまうからだ。
「ふあ~。よく寝た…。って思いたいけどなんか違和感があるな。なんとなく夢喰いの次元が開いた気がした…様な。ま、それより時間だな。行くとするか…。」
トンっとベッドから降りた華は、いつもの夢喰いの服装ではなく、昨日のフード付きの服にデニム姿に着替えて待ち合わせの病院前へと向かった。
「こんにちは、海野さん。改めて梅花華と申します。華で結構です。」
「あ。夢喰い…の方?」
「ええ。昨晩は、暗闇での面会でしたからね。それに依頼人と顔を合わせるような案件は、無いんです。これが初めてです。」
「そうなんですね。ありがとうございます。…華さん。今回、引き受けていただいて…。」
「まだ、解決していませんからね。とりあえず、病室の千佳さんに会いに行きましょう。あと、携帯のパスワードどうなりましたか?」
依頼者は、パスワードが解除できたことを華に伝え、事故の直前まで、オンラインゲームをしていたようだと言った。
「このゲームをしていたようです。やり方が分からないので、このゲームがどんなゲームなのか分からないんですが、華さんは、分かりますか?」
「少しくらいは、でも、あまりこういうのにハマらないタイプなんで確認してみないと分からないですね。」
「そうですか…。あっこの部屋で千佳は、眠っています。どうぞ。」
ガラガラとドアを開けるとただ、眠っている千佳の姿が見えた。