第四話
とりあえず一部完結です。二部は今のところ未定です。
ダウンしている敵をズバズバ斬っているだけだからあまりヒーローっぽくない活躍だったかもしれない。
…。
ワイバーンとの戦闘が終わった後、念願の”お尻に剣の刺さった男”の捕獲タイムとなる。
しのぶと俺とガンドーは力づくでスキンヘッドのマッチョマンたちを抑え込む。
「やめろッ‼人間に凌辱されるくらいなら…。クッ、いっそ殺せ‼」(CV杉田〇和)
出ました、有名な「クッコロ」‼出来ればお前ら以外の口から聞きたかったよ‼
「さあリンナ。”捕獲”のスキルを使ってこいつらの動きを止めてくれ‼」
俺は聖女系モンスター”お尻に剣の刺さった男”を羽交い絞めにしながら言った。
リンナは顔を赤くしながら俺とモンスターの姿を見ている。
「ええっ⁉こんな乙女的にはお宝画像なのに‼インスタにアップしてもいいですよね⁉…今晩のオカズ的な意味で」
このド未通女がッッ‼
「インスタに上げるのを許可するから早くやれ」
「了解ッ‼」
リンナは俺とガンドーが裸のマッチョたちと抱き合っている写真を次々と撮影する。
リンナは調教用の鞭で地面をピシッ‼と叩く。
「それっ‼モンスターさん、言う事を聞いてくださいね!」
それまで慌てふためいていた聖女系モンスター”お尻に剣の刺さった男”たちは静かになり横一列に並んだ。
ガンドーと俺は呆気ない結末に言葉を失う。
「どーですか、私もやるもんでしょ⁉」
リンナは眼鏡の位置を直しながら胸を張る。
「ふむ。それでは…合体させて聖剣に変化させるか」
しのぶは合成用のアイテム”賢者の箱”を取り出して地面に置いた。
外見は可燃ゴミの焼却炉に似ている。
しのぶはぱかっ、と足で箱の蓋を開けた。
「ふんっ!」
しのぶは無力化された”お尻に剣の刺さった男”たちを次々と投げ込んだ。
「ねえ、しのぶ。それってモンスターの死体でも良かったんじゃないの?」
イヴリンがビニールシートの上で正座した状態で尋ねる。
今は雪見だ〇ふくを食べている。
「生憎だが”お尻に剣の刺さった男”の”剣”の部分は生きている。本体が死ねば消滅するかコモンアイテム”痔の薬”になってしまうんだ」
「へえ」
イヴリンは興味のなさそうな返事をする。
本当は”雪見だ〇ふく”を食べる事に専念したいのだろう。
マイペース至上主義の大魔導師もしのぶの”リストラ手帳”が恐いのだ。
「ファイア‼」
しのぶは賢者の箱の上についている点火ボタンを押して3000度の炎を発生させた。
「ぎゃおおおおおおおおッ‼」
微妙に聞き覚えのある叫び声が聞こえる。
あれ?ガンドーは?
俺はいつの間にか姿を消している狂戦士の姿を探した。
「しまった。ガンドーも一緒に入れちまったか…」
「ガンドォォォォォォーーーーーーーーッッ‼」
俺たちは世界の平和を勝ち取る為に後いくつ大切な物を失われければならないんだ‼
俺とユーリとエリザとリンナは涙が枯れるんじゃないかというほど泣き叫んだ。
「助けに行ってあげればいいじゃない?」
イヴリンは緑色の雪見だい〇くを食べながら言う。
そんな…雪見だい〇くに抹茶味があったなんて知らなかった。
ああ、ガンドーにも食べさせてやりたかった…。
「それは駄目だ。今賢者の箱を開けてしまえば天使系モンスター”お尻に聖剣がささった男”が誕生しない」
「でも、しのぶッ‼ガンドーが箱の中できっと…悲しい、苦しい、一人は嫌だって言ってるニャー!」
ユーリは涙を流しながらしのぶに掴みかかる。
ビリッ‼ミシィッ‼
結構な怪力なので両腕から骨にヒビが入る音が聞こえた。
「おセンチな事を言ってるんじゃねえ‼」
しのぶは目を伏せながらユーリの横面を引っ叩いた。
「今聖剣を諦めるって事はガンドーの想いを踏み躙るのと同じ行為だ。ユーリ、ガンドーの事が好きなら今だけは我慢してくれッ‼ガンドーも、ガンドーもきっとわかってくれるはずだ‼」
「ぐあああああああああああッ‼」
箱の中からガンドーの悲痛な叫びが聞こえてくる。
ガンドー、お前の事は忘れない。
一時間後、箱の中の温度が下がったところでしのぶは蓋を開けた。
箱の中にはお尻に聖剣アメノテラスホシが刺さった男と灰になったガンドー(故人)が入っている壺があった。
なんてゲーム的なんだ‼
「しのぶ、ガンドーの遺灰はどうするの?こう、みんなの思い出の場所でバラまくの?」
エリザが泣きながらしのぶに尋ねる。
しかしガンドーの入っている壺を触る時は軍手をつけていた。
「いや。それだと酒場の真ん中になるからな。この復活アイテム、ヨミ・ガ・エールXを使う」
しのぶはどこの町の道具屋でも買える霊薬を垂らした。
すると見る見るうちにガンドーの体が元通りになった。
「しのぶ、テメエッ‼…よくも俺を一人にしやがったな‼」
ガンドーは復活してすぐにしのぶを殴った。
灰になるまで焼かれた事よりも一人になったことが嫌だったらしい。
ブルブルと震えながら泣いていた。
「すまん、ガンドー。お礼にSMグッズを一緒に買いに行ってやるから」
しのぶはガンドーの肩に手を乗せる。
ガンドーは一度頷いてから子供のように泣き出した。
ええッ‼それでいいのッ⁉
「男同士の友情っていいわね…」
「そうだニャー」
エリザとユーリは二人の仲が元通りになった事を心から喜びながら微笑んでいた。
残るは聖剣の入手だけだ。
俺たちは全員で合成したモンスターを取り囲んだ。
「あの、これからどうするんですか?」
後ろに下がっていたリンナはしのぶに尋ねる。
合成モンスター”お尻に聖剣が刺さった男”のレベルは80以上でレベル20そこそこのリンナが勝てる相手ではない。
保険を兼ねて最初から俺たちの作った輪の外に移動してもらったのだ。
「その聖剣をくれ。出来ればタダで」
しのぶはストレートに要求した。
男は剣の柄に手をかけ…ずりゅりゅりゅりゅりゅんッ!と一気に引き抜いた。
意外にもお尻から血は出ていなかった。
「この聖剣は神々の奸計によって地の底に葬られた女神を憐れみ、彼女の魂に安らぎを与えてやろうと願った神々の王のキンタマを鍛えて生まれた剣だ」
「これが…キンタマか」
「そうだ。お前も男ならどうか大事に使ってやって欲しい」
男は満足げに笑うと空間に生じた光の中に消えていった。
しのぶは刀身、柄、鞘と一通り眺めると俺に聖剣を渡す。
そしてニッコリと微笑みながらこう言った。
「見ろ、レスター。刃のところに陰毛っぽいのがついているぞ」
げっ⁉本当に黒光りしたチリチリのお毛毛がついてるじゃあーりませんか!
俺たちは次の日に聖剣を武器屋に売り払った。