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第三話


 会議は終わり俺たちは聖女系モンスター”お尻に剣の刺さった男”が出現するオロナイン平原に来ていた。

 オロナイン平原は昼間はそうではないのだが、夕方になるとモンスターが出現しやすい場所となる。


 「ガンドー。お前の出番だ」


 しのぶはガンドーの拘束具を外した。


 ガンドーは一応、狂戦士なので冒険の時は拘束具を装着している。


 「ついに俺の出番ってわけか。行くぜ、スキル”挑発”!うおおおおッ‼」


 狂戦士の専用スキル”挑発”は周囲のモンスターを呼び寄せる効果を持つ経験値や熟練度を上げたい時に使うスキルだった。

 レベルとステータスがカンストしている俺たちにとっては意味がないスキルだが。


 ガンドーはスキルを使用するとモンスターの気配が強くなっていた。


 一方ユーリは両手に装備している籠手系の武器”鉄の爪”を構えている。


 「待て、ユーリ。今回の戦いでモンスターを倒してしまっては元も子もない。格闘家のスキル”手加減”を忘れるなよ?」


 しのぶは忍者のスキル”忍術”の一つ、”霧隠れの術”を使う。

 この術は敵の攻撃の命中率と回避率を下げる。

 火炎系の魔法に一方的に負けてしまう欠点があったが、今回は火炎系の魔術やスキルを使うモンスターは出現しない。


 「了解ニャー」


 ユーリは早速出現したターゲットのモンスター以外を瞬殺する。

 天然の獣耳少女みたいなヤツだが空気が読める優秀な人材だった。


 「しのぶ、ところで俺の股間についているチンコケースはいつ外してくれるんだ‼」


 ズシャアッ‼


 ガンドーはノコギリのようなギザギザの刃がついた大剣を振り回しながらサイクロップスを真っ二つにしていった。

 サイクロップスのような上級の巨人系モンスターは再生力が高く、蘇生のスキルを持っている為に生半可な攻撃ではすぐに蘇ってしまうのだ。


 ズズズズッ‼


 ガンドーは再生不能となったサイクロップスの死体を積み上げ屍の山を作り上げる。


 「アイシクル・エッジ‼」


 そこに大魔導師のイヴリンが巨大な氷柱を落とす。

 彼女は攻撃と治癒の魔法のエキスパートで一応、会議には出席していたと言っておこう。

 イヴリンは腰まで伸ばした黒髪を風になびかせ後列に戻る。

 

 サイクロップスたちは劣勢になると退却しようとしたが、俺とガンドーとユーリは先回りをして退路を断つ。


  「戦神の光剣、フラガッハ‼」


 俺は実体を持たない光の剣を数本召喚し、サイクロップスたちに致命傷を与える。


 ガンドーとユーリは動けなくなったサイクロップスたちに止めをさしていった。


 「気をつけて、しのぶ!ワイバーンよ!」


 後列でレジャーシートを敷いて休憩タイムに入っていたイヴリンが上空を指示ゆびさした。

 

 大福と緑茶…、いつ用意したんだ⁉


 「しのぶ、俺の貞操体を外してくれ。チンポ振り回してチンコプターになって空中戦を仕掛けてやるぜ‼」


 ガンドーは鎖のついた股間のチンコケースをガチャガチャとやっていた。


 しのぶはガンドーを無視する事にした。


 「イヴリン、お前の魔法で何とかならないか?」


 しのぶは緑茶をすすっているイヴリンを見る。イヴリンは大福餅を隠した。


 「今日はもう何か眠たいから無理よ。ていうか私は遠距離は苦手って言わなかったかしら?」


 その時、しのぶはイヴリンの解雇も考えた。


 「そうだったな…。こんな時に狙撃手が入ればいいんだが」


 しのぶは後ろにいるエリザを堂々と無視した。


 エリザはあの後、セブンイレブン(このゲーム世界にはある)で揚げ物をフルコンプしようとしたがお財布のお金が足りなくて結局しのぶを頼ったのだ。


 「しのぶ。俺のタスラムならワイバーンを倒せるかもしれないぜ?」


 俺は第二の勇者スキル、戦神の飛礫タスラムの準備に入る。しのぶは首を横に振った。


 「駄目だ。タスラムを使えば他のモンスターが逃げてしまうからな。”お尻に剣の刺さった男”も逃げてしまうだろう」


 こちら側から見える向こうの丘には既に聖女系モンスター”お尻に剣の刺さった男”が数体出没していた。

 しのぶは悔しそうな顔をしている「あのー、ここに超優秀なクールな美人スナイパーがいるんですけど…」しのぶは耳を貸さない。

 揚げ物の料金を三千円くらい払わされたのを根に持っているのだ。

 

 「リンナ、場合によっては一度撤退という事もあり得る。その時はギャラは半分くらいになるが…」


 しのぶはイヴリンの魔法障壁の中に入っているリンナに話しかける。


 リンナは戦闘の激しさを目の当たりにして気絶していた。


 「しのぶ。私の弓ならワインバーンに…」


 しのぶはギリッとエリザを睨んだ。


 「ご、ごめんなさい…」


 エリザは何も言わずに引っ込んでしまう。


 「みんな聞いてくれ。俺の中でエリザは死んだ。食べきれもしない北海道産じゃがいも使用あったかほくほくコロッケを注文するような女など死んで当然だからな」


 しのぶはエリザの残した揚げ物を全て食べた時の事を思い出して吐きそうになる。

 最近のコンビニの揚げ物って油がきつくないか?


 「しのぶ。アタシ考えたんだけど、アタシを浮遊で空に上げてワイバーンと戦うのはどうかニャー?」

 

 「ユーリ、お前までガンドーみたいな事を言わないでくれ。”浮遊”の魔術では空中で動けない。例え”飛行”を使っても回避率が低下するだけだから意味が無いんだ」


 (ここで怪我をされたら治療費がかかるからな…)


 しのぶは金の事しか考えていなかった。


 「しのぶ様、レスター様。これからはもうワガママ言いませんからアタシにあの飛竜を倒させてくださいッ‼」


 エリザが土下座をして頼んできた。

 実はさっきから新品同然の大弓を使いたくてウズウズしていたのだ。


 「しのぶ、そろそろ許してやれよ…」


 俺からもしのぶに頼んでみた。

 

 しのぶはケータイでギルドと連絡を取って補充要員が来れないか交渉をしている。


 「エリザがいるじゃないかって?いないよ、そんな女は。大体エリザってどのエリザだよ。カードキャプターのか?帝国華撃団のか?」


 「しのぶ、エリザを許してやって欲しいニャー」


 ユーリはしのぶの忍者装束を引っ張った。

 しかし、しのぶはケータイに向かって怒鳴っている。


 「規定違反だ?ふざけんな、こっちは遊びでやってんじゃねえんだ‼1000ゴールド以上は絶対に払わねえよ‼」


 「しのぶ、ワイバーンが”お尻に剣の刺さった男”を襲い始めたぞ」


 ガンドーが切れたしのぶに恐る恐る話かける。

 しのぶはケータイに向かって「死ねッ‼」と叫ぶとエリザを見た。


 「エリザ。俺が全面的に悪かった。すまない。今からスナイパーとして仕事をしてくれないか?」


 しのぶは深く頭を下げた後、土下座をする。

 人間というより異形のクリーチャーみたいな顔をしているが謝る時はしっかりと謝る。

 俺にはこの切り替えの早さが恐ろしい。


 「も、もうっ‼許してあげるのは今回だけなんだからね‼次やったらパーティー出て行っちゃうんだから‼」


 エリザは赤面しながらフィールドに出て行く。

 そして背丈ほどある大弓に矢をつがえ、一射ごとにワイバーンを墜落させていった。


 その頃しのぶは立ち上がって膝についた土を落としていた。


 「レスター、そろそろワイバーンが復活して空に飛ぶはずだ。地上で倒すぞ」


 しのぶは何事もなかったかのように墜落したワイバーンに急行する。

 実績以外は興味無し…ヤツにプライドはない。


 俺は第三の勇者スキルである戦神の光槍ブリューナクを召喚して掃討戦に突入した。

 ブリューナクは一度召喚すると一定時間がすぎるまで実体化しているMPを節約したい時には頼もしい魔法の武器だ。

 威力は他の二つに劣るのはタマにキズなんだけどね。

 というわけでしのぶが忍者スキル”毒霧の術”で相手の再生能力を無効化しながら俺たちはワイバーンを全滅させた。

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[一言] 「オロナイン平原」。オロナインって! 長い間忘れていた懐かしい響きの不意打ちで、笑い過ぎて吐きそうになりました!
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