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第一話


 どうやら聖剣が無ければラスボスは倒せないらしい。


 困った。


 こんな時はパーティーの頭脳ブレインふじわらしのぶに相談だ。

 俺はキャンプ中にしのぶを呼び出した。


 「リーダー、何の用でござるか?」


 しのぶの今の職業は忍者だった。前は僧侶だったと思う。


 「どうやら魔王を倒す為には聖剣が必要らしい」


 魔王ギガノホーン。

 

 まだ名前さえ出ていないがラスボスだそうだ(ネット情報)。

 ちなみにこれは無責任なネット情報でゲーム世界を無双する話である。

 俺がしょっちゅう見ているネット情報にも「困ったらしのぶを頼れ」と書いてあった。


 頼りになるぜ「ふじわらしのぶの超ゲーム攻略」!


 「ちなみに聖剣の入手方法とは?」


 俺はコマンドを開いてモンスター図鑑を開く。


 「あ」行の聖女系のモンスターを選択、「お尻に剣が刺さった男」を指さした。


 「コイツがたまに落とすらしい…」


 「ウンコとか付着していそうですな」

 

 二人は沈黙した。


 「これ…お前のパッシブスキル”アイテムドロップ率上昇”で何とかしてくれないか?」


 俺は両手をすり合わせて頭を下げた。

 しのぶはスゴク嫌そうな顔をしている。実際俺もやりたくない。


 「…大恩あるリーダーの頼みなら仕方ありませんが私のスキルだけでは無理ですよ、これ」


 しのぶは空中に映し出されたモンスター図鑑の文章に人差し指を向ける。

 聖剣のドロップ条件に”モンスターの捕獲”と書いてあった。

 このモンスターを倒してしまうと手に入らない。

 致命的なミス‼俺のパーティーには捕獲のスキルを持っているヤツがいない。


 「しのぶ、お前のレアスキル、スキル”コピー”で何とかならんか?」


 しのぶは僧侶の前はトリックスターをやっていた。

 その職業にはスキルコピーというスキルがあって、交流のある冒険者のスキルを一回だけ真似することができるのだ。

 しかし喜びも束の間、しのぶは目を伏せながら首を横に振る。


 「コピーで捕獲できるのはDランクのモンスターまで。それ以上となると本職で無ければ無理ですよ…」


 「しのぶううううッ‼…じゃあどうすればいいのか教えてくれよ⁉」


 俺は駄々っ子のように腕を振り回す。しのぶはため息をつきながら答えた。


 「ギルドに言って新メンバーを募集しましょう。今はモンスター使いは需要が高いので難しいかもしれませんがレスターさんの名前で声をかけたら集まると思いますよ?」


 流石はしのぶ、頼りになる。

 ありがとう、ふじわらしのぶ。


 ありがとう”ふじわらしのぶの超ゲーム攻略”。


 俺こと勇者レスターは早速、城下町にある”出会いと別れの酒場ゴッドアンドデビル亭”に向かった。

 

 酒場は相変わらず繁盛していて今日も昼間だというのにテーブルは満席状態だった。

 俺としのぶとパーティーの副リーダー、狂戦士ガンドーは酒を注文する。


 「梅昆布茶」


 「もずく酢」


 「紅ショウガ」


 ()()()()()()()


 俺たちが注文を終えるとカウンター奥から店主が現れた。


 元冒険者のケントスだ。

 ケントスは冒険者を引退してから冒険者に仕事を紹介する酒場を経営するようになったのだ。

 最近では冒険者ギルドという組織まで立ち上げて少しでも冒険者たちが安心して仕事が出来るようにしているらしい。


 「おう、レスター。久しぶりだな。しのぶ、ガンドー、元気だったか」


 ケントスは俺たちにウィスキーソーダを用意してくれた。


 …()()()()()()()()()()

 

 「久しぶりだな、ケントス。今日は新メンバーを募集しようと思ってここに来たんだよ。しのぶ、アレ何だったけ?」


 「モンスター使いだ。ぶっちゃけ捕獲スキルと中級レベルなら誰でも構わない」


 ダンッ!


 ガンドーはウィスキーの入ったコップをカウンターに置いた。


 「これ甘くないから飲めない。レモン酎ハイにして」


 ガンドーは外見に反してウィスキーが駄目だった。


 俺としのぶはズッコケたが、ケントスは年上の余裕を見せてレモン酎ハイを用意する。


 ガンドーは鳥のから揚げをくいながらレモン酎ハイを飲む。


 「モンスター使いね。お前らもしかして聖剣を手に入れようとしているのか?」


 ケントスはカウンターから俺たちに尋ねる。話しぶりからして今は”聖剣”の入手がちょとしたムーブメントになっているらしい。


 「そんなところだ。心当りはあるのか?」


 「俺の知り合いでいいなら紹介してやるぜ。おい、リンナ、ちょっと来い」


 ケントスはカウンター奥にいる女性に声をかける。


 「ふぁ~い」


 いかにもトロそうな眼鏡っ娘だった。


 「ほう。アレがお前の性奴隷か。いい趣味をしているな」


 ガンドーはレモン酎ハイを片手に親指を立てる。


 「ンなわけあるか‼アレは俺のパーティーにいたジルベルっていうヤツの孫だよ‼」


 レンジャーのジルベルト、冒険者たちの中では草分け的な存在で中級以上ならば知らぬ者のいない男だ。


 「仲間の孫娘を性奴隷にするなんてつくづく鬼畜だな‼おい、レモン酎ハイを追加してくれ‼」


 ガンドーはガハハと笑いながらコップを突き出す。


 「この酔っ払いが‼」


 酒のお代わりではなくケントスのハンマーパンチが出てきた。


 「今まで辛かっただろうけど、もう大丈夫だよ。あのオジサンはしばらく牢屋の中から出て来れないだろうから」


 しのぶはリンナに余計なアドバイスをしていた。

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