フラペチーノはベンディサイズで。
「へ?」
「だから、フラペチーノ奢って。」
「え?やだよ。だって高いもん。」
「さっき電車に轢かれようとしてる所を助けてやった恩人はどこの誰だと思ってるの?」
「ぐぬぬ……」
自殺しようとしていたのを邪魔されて腹立つなんて言えるわけがない。だから俺は一歩譲ることにした。
「はいはい。わかった。で、何味買うの?」
「抹茶!あとサイズはベンディ!一番高いの!」
「何円?」
「630円。」
「アーオカネガタリナイナー」
奢りってこともあって容赦無くたかってくる。てか一番大きいサイズベンディって言うんだ。
「じゃあ行こ!」
駄目だ。話をまるで聞いていない。昔と比べると美香は大分大人びてきたが、こういうところはまだまだ幼い。
「ねぇ、なに突っ立ってんの!早く行こ!」
「ごめん、ぼーっとしてた。」
言えるはずがない。夕焼けに照らされた姿に見惚れていたなんて。
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「うむ!やはりフラペチーノは我々に生きる活力を与えてくれる。で、なにしてたの?」
「ちょっと野暮用で。そっちは?」
「んー、こっちもそんな感じかな。」
今俺たちはスタバでフラペチーノを飲んでいる。勿論俺の奢りで。一番デカいサイズを奢らされた。今財布スッカラカン。死ぬつもりだったし、まあいいか。
「昨日のテストはどうだった?俺もうダメ、赤点追試のダブルパンチ。」
「やばいじゃん。こっちもまあちょっとダメだったかな。」
嘘である。美香は常にテストの成績は学年トップの優等生。でも授業中は寝てばかりなのが癪に触る問題児なのだ。
「部活どんな感じ?」
「大会で忙しいかな。」
「そういえば勧めたアニメ見た?」
「あー、あれ!7話の伏線やばかったよね!あれは熱い!」
「ねえ知ってる?2組の結衣ちゃんついに畑原と付き合ったんだって。」
「マジ?」
会話は最近の近況からアニメ、恋バナに至るまで様々で弾みまくった。ふと外を見るとすっかり暗くなっていた。時計はもう7時半だ。
「あのさ、相談が…」
「もう時間だな。お開きにしよう。」
「うん。そうだね……」
「じゃあね。」
「また明日。」
手を振る美香の顔は笑顔だった。だが、その笑顔にどこか違和感を感じた。
♪〜
電話の着信音だ。母親からだった。
「なにフラフラ歩いてるの!はやく帰ってきなさい!」
「今帰ってるとこ!てかスタバ行くってLINEしたでしょ!」
相当お冠な様子だ。一刻も早く帰らねば。