表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/19

四話 オリバー 幼少期~1

 小さい頃から、綺麗な物や、可愛い物が大好きだった。包装に使われていたリボンを大事に取っておいて、箱の中に綺麗に並べていた。そこにはレースの端っこや、ツヤツヤした端切れも入っていて、開ける度にドキドキした。

 普段はあまりお化粧をしない母様が綺麗に着飾ると、それを見るだけで嬉しくて、ドレスの裾にまとわりついて離れなかったのを覚えている。


 そして、そんな時はたいてい父様が訪ねてきた。時々やってくる父様は、黒髪で背が高く、ひげを生やしていて、僕は少し怖かったんだと思う。あまりなつかない僕を、いつも少し寂しそうに見てた。




 でも、その日は少し違った。父様はなんだか照れ臭そうにしながら、後ろ手に隠していたものを僕に見せてきた。それは薄茶色のクマのぬいぐるみだった。


 ふわふわで、茶色の大きな目をしているクマは、ピンクの花のついた白いリボンが首に結ばれていた。抱きしめると柔らかく、ふんわりといい匂いがした。


「気に入ったか?」


 うんうんと肯く。


「よかった。それはヴァイオラからだ」


「まぁ、お嬢様が?」


 ヴァイオラ?お嬢様?


「あぁ、どうせ私はプレゼントの趣味が悪いだろうからと言って、自分の持っていたぬいぐるみをくれたんだ」


「…それ、誰?」


「君の姉様だよ。年は君より3歳上でね、今7歳だ」


「姉様……」



 ふわふわで可愛くて、いい匂いがする<これ>をくれた姉様。僕のために自分のぬいぐるみをくれた姉様。まだ会ったこともない姉様を、その日、僕は大好きになった……



 僕はぬいぐるみにビィと名前を付けた………




****



 それから三年後、僕と母様は、父様と姉様のいる侯爵家に迎え入れられた。その二年前に侯爵夫人が亡くなり、その喪が明けたためだと後で知った。


 初めて姉様に会う、そう思うだけですごく緊張した。通された応接室は天井が高く、高そうな調度品が飾られていてさらに緊張が高まる。その部屋の応接セットの側に姉様がいた。

 父様と同じ黒髪をハーフアップにして、僕と同じ瞳をしている彼女は、凛とした雰囲気の綺麗な女の子だった。

 姉様は近づいてくると僕の手を取って、


「ようこそ、オリバー」


 そう言ってくれたて、すごく嬉しかったけど、緊張していた僕はただ肯くしかできなかった。その後姉様は、僕と手を繋ぎ部屋まで案内してくれた。部屋にはすでに荷物が運び込まれていて、ベッドの上にはビィが座ってる。


 ビィは母様が作ってくれたスカートを穿き、僕が結んだリボンをいくつもつけていた。



「まだ持ってくれてたのね。おまけに、ふふっ、可愛くなってる」


「ビィっていうの」


「そう、ありがとう」




「姉様は……嫌じゃない?僕や母様がここにきて」


ビィを抱え、ベッドに腰掛けて聞く。


「全然嫌じゃないわ」


 そう言って隣に腰掛け、僕の頭を撫でながら姉様は色んな事を話してくれた。

姉様の母様はきれいな人だったけど、病弱であまり会えなかった事や、父様が忙しい中でもちゃんと気にかけてくれてたこと、僕の母様の事を知った時少し悲しかったことも。それでも弟がいると知ったときは嬉しかったと、声を強めて言ってくれた。




「だから、オリバー、これから仲良くやっていきましょう」



 初めて姉様に会った日、僕は姉様がさらに大好きになった……



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ