エピローグ
オリバー視点です
翌朝、馬に乗って帰るというアニーと一緒に厩舎に行った。アニーの馬は僕の想像以上に大きかった。
「ジアンていうの」
「もしかして、今回のためにわざわざ用意してくれたの?」
アニーは少し首をかしげて、首をふった。
「もとから欲しかったから誕生日のプレゼントにお願いしたの。オリバーと婚約してから、自分のしたいことを我慢する必要はないって思うようになったし」
馬の黒く艶やかな毛を撫でながらそう言う彼女は綺麗だ。
「僕、馬に乗れないけど、どうやって浚ってくれる予定だったの?」
「オリバーを前に乗せて、私が後ろで手綱を取るの」
「僕が前?後ろじゃなくて?」
「うん。後ろの方が揺れるから私が後ろ。それにこの鞍はサイドサドルだから、ドレスのオリバーはやっぱり前。一応今回のために二人乗り、練習したの。まだ常歩しかできないけど」
赤くなって俯き、一人で乗るのはそれなりなんだけど、と呟く。
「ねぇ、乗せてくれる?」
ポクポクポクポクと朝の邸宅街をのどかに歩く馬の上で、僕はにやけて仕方なかった。ドレスを着て横乗りしている僕の後ろには、男装のアニーがいて、僕を抱えるように手綱を取ってる。その手には新しい剣ダコ。乗馬も剣も拳闘も、全部僕のためで、それが嬉しくて堪らなかったから。
優しくて、強くて可愛いアニー、僕はもっと頑張って、君に相応しくならないとね。
(とりあえず、アニーは計算が苦手だから、領地運営の時にしっかり手伝えるよう、もっと勉強しないと。でも、アニーに似合うドレスのデザインもしたいしなぁ)
「もしかして、この速さで逃げるつもりだったのって、おかしいと思ってる?」
僕の笑い声が聞こえたのか、アニーが聞いてきた。
「違うよ。アニーが僕のために色々頑張ってくれたのが嬉しくて、つい。ねぇ、この後はどんな予定だったの?」
「……馬でうちまで行って、その後は馬車でピアリー湖の別荘に行くつもりだった。お父様に許可も取ったし」
ピアリー湖は風光明媚な観光地だ。二人の逃亡予定地がそんなところだなんて、なんだか嬉しい。
「だったらそれ、結婚式の後に実行しない?」
アニーの心臓の音が早まったのが判った。
「……じゃぁ、二人乗り、もっと練習しとくね」
その言葉が嬉しくて、甘えるように少しだけ体重を後方にかける。
するとアニーは少し身体をずらして…僕の頬にそっとキスした。
蛇足かも?とは思ったものの、アニータちゃんの努力を披露したくて書きました。
これで本編終了です。
あと一話、おまけの話があります。




