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十三話 婚約破棄騒動 アニータ

 オリバーから、二週間後に開かれる彼のお父様であるオーシーノ侯爵の40歳の誕生日パーティで、殿下が何かを計画しているようだと教えてもらった。


 ついに決着の時だ!!


 侯爵に手紙を書き、あることをお願いし、その日のための衣装を用意した。これは昔お父様が着ていた物を、侍女たちの手を借りて私用に仕立て直した物で、今の私にとっては戦闘服だ。練習にも身が入る。筋肉痛は相変わらずだが、ようやく思うように動けるようにもなった。

 オリバーも何か計画があるようで、当日はエスコートが出来ないかもと言われたが、私としても計画の都合上、単独で動きたいので問題無い。


 そして当日。


「よし!」


 パンッと両頬を叩いて、気合いを入れる。気分は騎士物語に出てくる<姫を助ける騎士>そのものだ。


 

 侯爵邸に着いた私は、事前に許可を取っていた通りに準備を進め、その時を待った。


 

 

「ヴァイオラ、いまここに、私は君との婚約を破棄することを宣言する!かわりに、この麗しくも愛らしいオリヴィアを新たな婚約者に決めた!そして、これまで君がオリヴィアに対して行ってきた悪事を、今から白日の下に晒してやる。覚悟するがいい!!」


 ついに始まった!!離れた所でアンドルー様の声が聞こえたる。その内容は……


(えっ、婚約破棄?ヴァイオラ様がオリバーに悪事?)


 いったい何のことか判らないが、急いで声の方へ向かう。

 ただでさえ人が多いうえに、殿下のせいで人が集まってきたため、なかなか思うように進めないが、ドレスでないだけまだマシだ。体をねじ込むようにして何とか人垣の前にでるが、テーブルが邪魔でまだ少し遠い。


「おまけに後妻の子であるオリヴィアに対して、何度も『あなたは妹ではない』と言って、その存在を否定したそうだな!」


 (??)


 何を言ってるんだろう、殿下は。それはオリバーの去年と今年の誕生日に行った<姉妹なふりして街角散歩>の時の事よね?それが何で悪事になるんだろう?二回とも、すごく楽しかったってオリバー言ってたのに。いやそれよりも、殿下、オリバーの肩に置いてるその手を放しなさいよ!


 あ、今度はあの睨んできた友人が出てきた。ん?オリバーの出生証明書?なんでそんなものまで?

あっ、まさか神殿に入るには出生証明書がいるとか?

 まさかそこまで手をまわしているとは…


 いざという時のために準備運動を始める。お父様に教わった拳闘を基にしたもので、脇を締め、左右の腕を交互に、できるだけ早く繰り出す!


 あ、オリバーが私に気づいたようだ。こっちを見てニヤニヤしてる。思わず手を振りかけたその時、


  パンッ!


 その音にびっくりするが、すぐにそれがヴァイオラ様を殿下が殴った音だとわかった。なんてことをするんだ、この男は!オリバーも真っ青になっている。いよいよ私が前に出なければと思ったその時、ヴァイオラ様の言葉で状況が一変した。


「オリーはわたくしの妹ではありません、あれは弟です」


 途端に殿下はオリバーの肩から手を放した。?あれ?もしかして殿下、オリバーのことを女の子だと思ってたってこと?じゃぁ、ばれてなかった?だったら、殿下のあっちの趣味は?神殿入りは?



 その後のやり取りは、驚きすぎたせいかあまり耳に入ってこなかったが、何とか人垣をかき分け、オリバーの後ろに回り込み、話しかける。


「女装趣味がばれた訳じゃ無かったんだね」


「みたいだね」


 いろいろ悩んで、焦って準備した分、ちょっと腹が立つから睨んでみた。


「もしかして、気が付いてた?」


「ウーン、なんとなく?まぁ、確信するほどでは無かったけど」


 それでも婚約者の妹に手を出そうなんて奴とは、姉様を結婚させるわけにはいかないからねと笑う。


「結構準備、大変だったのに…」


「なんの?」


「オリバーを攫って逃げる準備。お父様に剣と拳闘の稽古をつけてもらったり、侯爵に頼んで、会場近くのテラスの側に馬を繋がせてもらったり。その他もいろいろ準備したのに。これだって」


 そういって纏っている衣装を指さす。お父様のお古の男性用の礼装だ。


「馬で攫って逃げるて…それって、まるで囚われの姫を助ける騎士みたい」


 オリバーが嬉しげに笑う。


「そうだよ、私、オリバーの騎士だもん」


 もっとも今回は騎士の出番はなかったけど、オリバーが無事で楽しそうだから、まぁいいや。






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