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物理職皆無の世界の聖剣伝説   作者: 十字路 ミノル
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物理職皆無の世界の聖剣伝説Ⅷ

9話 聖域


目の前まで来ていた黒い炎が硝子細工のように固まった。

後に衝撃だけが残って、俺は後ろに跳ね飛ばされた。


「畜生!どうしてだ!!」

黒い竜が後方で咆哮をあげていた。やはりピクリともうごかない。


「せッかく次の持ち主ができたんだもの。かッこいいとところ見せたいな。あ、ケンシロウくん大丈夫?」

「出てこなければどうしようかと思ったぞ。全く心配かけおって!お主は昔からそうじゃぁっ!」

カリストのツンデレなお言葉に水を差さないように大丈夫と伝えると、ショウタロウはにっこりと笑って言った。


「カリストでも君を守れたと思うけど‥敵襲なんて久々でね。羨ましいな〜と思ッて出てきちゃッた。」

「ありがとう、守ってくれて。」

「僕ね、もう体がないから今は魔力によッて意志を具現化してるだけなんだ。でも、君を守るくらいたやすいよ。」

心許ないなんてとんでもない。ヤバい。超心強い。


「不味いです!!大変です!!!」

そこにイオが空間の破片を撒き散らしながら駆け込んできた。

「あれ、イオどこにいってたの?」

「あんな黒竜一匹で空間が壊されるわけがないと思いまして!周囲を探っておりました!!その黒竜と同じ竜が無数にここを取り囲んでます!!」

「なんじゃ、やっぱり下っ端じゃないかね。」

溜息まじりにカリストが言う。


普段なら考えられないような絶望的な状況。でも、彼はそれをひっくり返すだけの力がある。


「チィッ!俺一人では無理だ。仲間たち!!頼む!!」


砂漠の風景が全て壊れて、無数の竜が一斉になだれ込んできた。


「よーし、ケンシロウ君。こいつら全員やッつけちゃうね!!」

「あぁ。頼んだ!!」


聖域(サンクチュアリ)。」


四方八方を取り囲む竜達の動きが一斉に止まる。

みな、よくできたプラモデルのように動かない。


動けない、なんだこれはと竜達は口々に怒鳴り声を上げ始める。そんな竜達を尻目に、常に温和でふわふわした物言いのショウタロウが、ゾッとするほど冷やかな声で呟いた。


「全く‥煩いなぁ動けないくらいで。僕は煩いのが大嫌いだ。ケンシロウ君、トドメさしていいかい?」

「任せる。」


途端ショウタロウの足元に金色に光る魔法陣が展開された。それはみるみる大きくなって、動けなくなった竜の大群をすっぽり飲み込んでしまった。


「僕の世界に、音はいらない。沈黙を壊す者共に死を与える。この聖域を浄化せよ。暗黙の領域(サイレントワールド)。」


展開された魔法陣が金色から一気に黒へと変わった。

刹那、光が差したかと思うと、魔法陣の上にいた竜は一匹たりとも残らず消えていた。後には割れた空間の破片が散らばっているだけだった。


「え‥‥竜は‥?」

「う〜ん、浄化したよ!」

怖いほど清々しく笑ってブイサインをするショウタロウ。「一仕事終えた」感じだろうか。

「心もとないなんてとんでもなかったです。ご無礼をお許しください!!」

「あ〜。僕がヘナチョコなのは不変の事実だからいいんだよ?」

カリストがずっと物申したそうにこちらを(ショウタロウを)見ているのは気がつかなかったことにしよう。


「この魔法は聖域魔法といッてね、僕の場合沈黙を代償に結界を張ッたり、範囲内で沈黙しないものを縛ったり浄化できたりする。さっきケンシロウ君に黙ッててもらったのはそういうこと。変だよねぇ」

「変‥と言うかぶっ壊れチート能力だと思うよ?」

「う〜ん、頻繁に使える魔法じゃないからさ、ケンシロウ君がここだって思ッた時に僕を呼んでよ。」


ショウタロウが再び光の玉に戻った。

「嗚呼〜疲れた〜僕今日は帰る〜」

テレビの怪奇現象特番で見るような小さなオーブのようになったショウタロウは、俺が持っていた聖剣の中に吸い込まれていった。


「ちょっと派手にやりすぎたようじゃな。100年も眠ってた癖に。」

「おお‥集めた意志はポケモン形式なのか。」

壊れて剥き出しになったカリストの空間で、俺は仲間の入った聖剣を高く掲げた。心の奥がビリビリするほど神々しい剣。仲間。もう勝ち確な気さえした。


「お、そうじゃ。吾輩の意志も連れて行って貰おうかの。それが今の最善者と思えるのじゃ。ライにもそう伝える。聖剣とその使い手を連れて帰ってくるとな。」

「わぁぁっ!凄いありがたいじゃないですか!」

「最善‥カリストが言うならそうなんだろうな。ついて来てくれる?」

カリストはそっと聖剣に手をかざして言った。

「まぁ、吾輩とショウタロウがいれば最低限戦えはするかもしれないからの。」

カリストもまたオーブのようになって聖剣に吸い込まれていった。

「100年分のお主に対するイヤミをやっとぶつけられるのぉ〜。」

「うへぇ〜それはちょッと勘弁だなぁ」

「ふふっ。感動の再会ですね!」

その日、聖剣の内側からの声が絶えることはなかった。
















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