表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第三章:三聖獣集結、そして飛翔
77/168

77:心と力を束ねて!

「コイツはスゲエや。あの白と緑のデカブツ相手に勝負になってる」


「私の盾も、ファイトライオの斧も通用しなかったというのにな……」


「ホッホウ、ライブリンガーとグリフィーヌ、まさか二人が合わさり、ここまでの力を発揮するとは……嬉しい誤算だぞ」


 私とネガティオンが力と言葉とでの激しいぶつかり合い。これに触発されてか、聖獣たちも休んではおれんとばかりに立ち上がって来てくれる。

 そんな傷ついた体を押して私に加勢しようという三聖獣に、ビブリオとホリィが待ったをかける。


「三人とも、無理をしちゃダメだよ!」


「どこまで効くかは分からないけれど、せめて回復の魔法を受けてから!」


 状況の許す限りに体勢を整えてからにという二人の意見に、翼持つ白の賢者は首を横に振る。


「いいや。それを言うならば二人もだろう。ファイトライオの復活。その前後に使った魔法の数。呼吸を整える間を置いてごまかしているとはいえ、決して軽いものではないぞ」


「……それは、でもッ!」


「ライブリンガーも、みんなも命がけで戦ってるのに、私たちばかり大事に守られてばかりいるのは……!」


 魔力の枯渇を指摘されて逆に待ったをかけられた二人が食い下がるのに、セージオウルはもう一度首を横に振る。


「ホッホウ、すでに充分やってくれたのだから、ここは我々の踏ん張りどころだということだ。なに、この私が無策でこんなことを言うと思うかね?」


 噛んで含み、諭すセージオウルの言葉に、ビブリオもホリィもうつむかせた頭を振る。


「それで、その策とは?」


「あの魔王と魔獣どもの群れにあっと言わせてやれるようなのなんだろ?」


 もったいつけるなと促す竜騎士と獅子戦士。この同胞に、梟賢者は胸を張り、その秘策を発表する。


「然り、我々三体も合体するのだッ!」


「はぁ!?」


 しかし対する同胞からの反応はなに言ってんだコイツとばかりの、当惑のリズムで瞬く視線だった。


「合体する……って、どうやって? そも、我々にそんな能力があるのか?」


「いやいやいや、オレ様だって知らねえよ? なんでそんなこと思い付いたよオウルよぉ!?」


「それはもちろんライブリンガーを見てだ。翼になってるグリフィーヌとばかりでなく、以前から二体の巨大鋼鉄獣と合体しての巨大戦闘形態へ変化していたのだ。あとは私たちのニセモノが合体できていたのだ。本物ができない理屈はないぞ、ホッホウ」


 できるできると熱弁するオウルだが、対する同胞二人からは訳が分からないぞとばかりの当惑しか返ってこない。

 まあ無理もない。今まで考えもしなかったことをさあやるぞと言われても困惑の方が勝つだろう。


「ほほう。それが本当ならば厄介なことだな」


 しかし当人たちの困惑に構わず、ネガティオンは合体などさせるものかと、ロルフカリバーを受け流しながらアームカノンを上空へ。

 放たれたエネルギー弾はまるで花火のようにある程度の高さで弾けると、そのまま消えること無く三聖獣を、その背後の人間軍をめがけて落ちていく。


「しまったッ!」


 急いで守りに回ろうにもネガティオンの剣と砲が私に離脱をさせない。

 しかしこれにセージオウルがサンダーウェブを空中に広く投射。

 これは破られながらも砲撃を塞き止めたが、それはある程度でしかない。とっさの対応ゆえの隙間やこじ開けられた穴。それらを抜けてきたものを、ガードドラゴの水の盾が受け止める。しかしネガティオンの砲撃は、拡散してなお二つ目の守りすら破るものが。

 これをファイトライオが斧で直接、あるいは投げ斧の要領で飛ばした炎で叩き落とすことで、メレテを守る人々と設備の被害を抑えていく。


 だが私と切り結びながらの拡散砲はこの一発では終わらない。それをさせじと圧力を強める私を嘲笑うかのように、わずかな間を塗っては砲撃を繰り返すのだ。


「ホッホウ。出来るかどうかを議論している場合では無いぞ!? なんでもやってみるもの、やってみたらなんかできたということもある!」


 砲撃への対処を続けながら、セージオウルは彼らしからぬ博打めいた物言いで出たとこ勝負な三聖獣合体に誘う。


「ええい分かった! 正直実感はわかないが、出来るのだというのならば!」


「やってみる価値はあるってもんだよな!」


 現状、魔王相手のジリ貧。そこからの起死回生の一手になるならば試さない手はないと、ドラゴとライオはオウルの誘いに乗る。


「で、やるとは言ってもどうしたらいい!?」


「……それが分からん。集まればなにかひらめくかもと思ったが、ひとまず心を一つとするか?」


「いや出来てるだろ!? 白い魔王を倒そう、危険にさらされた命を守ろうって、一丸になって動けてるこれなら出来てるだろうがよ!?」


 しかしダメ。三人が揃って合体すると決心し、了承してもその方法を誰かが閃くわけでもない。

 おまけにただいま鋼魔王ネガティオンに対処している真っ最中。合体方法を探る試行錯誤を許してくれる状況ではない。

 かくなるうえは!


「三人とも、まとまった心はそのまま、私に力を貸してくれ!」


「なにか手があるのか!?」


「いずれにせよ、このままではおれん」


「ここはアンタに任せるしかないか!」


 私の提案を受けて三聖獣は快く了解の返事をくれる。これに応えるべく私は合体によって得た力を全開。渾身のクロスブレイドをネガティオンへ打ち込む!


「まだこれほどのパワーを!? だがしかし!」


 これをネガティオンはケイオスストリームのエネルギーを盾にしつつ後ろ飛び。

 受けつつ逃げるこの守りは、私の渾身の一撃をただ大きく吹き飛ばすだけで終わらせる。


 だがそれでいい。それがいい。


「今だ、私の周りを三角形に囲んでッ!!」


「おう!」


 私の指示に待ってましたとばかりに声を揃えて、三聖獣は私の望み通りの位置に布陣。

 その動きはまるで最初から立つべき場所が分かっていたかのように淀みない。

 私の注文に完璧に応えて、いやその上を行く素早く正確な動きを受けて、私はエネルギーを込めたロルフカリバーの刃を地面に突き立てる。

 地面に突き立ったロルフカリバーから波打つように広がったエネルギーは三聖獣の足元に達するや、彼らを包む形でそれぞれを象徴する色の光の柱を建てる。

 天を貫き、互いの間で共鳴増幅を行う光の柱たち。そこから広がった津波となって広がったエネルギーは、鋼魔と、彼らに従う魔獣たちを飲み込む。

 しかしその一方で、人間たちはただ眩しい思いと強い風に煽られるだけ。それ以上の影響はない。

 そう、鋼魔とその配下だけを押し流す怒涛の津波を私たちは引き起こしたのだ。


「なんとぉおッ!?」


「うぎゃぁああああッ!?」


 実に私たちに都合のいい光の津波は、身動きの取れずにいるウィバーンはもちろん、ネガティオンでさえも一方的に押し流す。

 そして広がりきったエネルギーは、私たちの作った光の柱を支えに、メレテの都をまるごとに包む光のテントとなる。

 やったぞ、上手くいった!

 私たち全員のバースストーンの力。それを束ねることが出来れば、鋼魔を阻み退ける力になるだろうと思いついてのものだが、予想以上だ!


「我らを拒む結界だとでも言うかッ!?」


 光の幕のすぐ外に踏み留まったネガティオンは、切り開いてやろうとばかりに結晶質の刃を光の幕に叩きつける。

 しかし触れ合った瞬間に、反射されたエネルギーがネガティオンに。呻き声を上げて刃を引くも、結界に切りかかった刃はこの反射反発に負けて砕け散っていた。


「今これを破るのは少々骨か……ここは引いてやるとしよう」


 私たちの結界に負けたイルネスメタルのブレードを一瞥するや、ネガティオンはこちらに背を向けて飛び立った。

 飛行形態に変形して、撤退してくれたのだ。


「……追い返した? ネガティオンを、追い返せた、のか?」


 遠退いていく機影を眺めながら、私はまだ実感の湧かない現状を口に出す。

 それと同時に、力を振り絞りきったマキシマムウイングボディが膝を折る。


「そうよライブリンガー! 勝ったのよ!」


「おっぱらった! ライブリンガーがおっぱらったんだ、魔王をッ!!」


 これに続いて、ホリィとビブリオを皮切りにした勝利を祝う声がメレテの都から巻き起こるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ