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勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第三章:三聖獣集結、そして飛翔
73/168

73:転生飛翔! マキシマムウイング!! ※挿絵アリ

河合ゆき氏に描いていただきましたマキシマムウイングのイラストを挿絵として使用させていただきました

挿絵(By みてみん)

「わ、私が飛んでいるッ!?」


 いきなりに高くなった景色に私は思わず声を上げてしまう。

 それまで私はスラスターの推力でもって強引に飛び上がることはあっても、それは力任せに高度を取るだけ。

 グリフィーヌに吊り下げられる形で、空中戦をやったこともある。けれどそれは私たちのコンビネーションと彼女の飛翔能力があってのことで、私自身が飛んでいた訳ではない。


 しかしいま私は、グリフィーヌの変じた翼を背負い、これを細かに操ることによって、安定してホバリングすることも出来ている。グリフィーヌの力によって空戦能力を獲得したこの形態。名付けるとするならば……。


 ライブリンガーマキシマムウイング、といったところか?


「今の声!? いや、直接私の中で響いた今のはッ!?」


 私の聞き間違いでなければ、失ってしまったグリフィーヌの……。


 ああ。聞き間違いではない。私だ、グリフィーヌだ。


 私が頭脳の内で捏ねていた疑問に苦笑気味に返ってきた言葉に、私は思わず飛行のコントロールを手放しかけてしまう。


「なんと!? 確かに復元されたボディは変形して私とドッキングしているが……ということはまさか……ッ!?」


 私と合体したことで、最後に残されていた意思が私の中に流れ込んできていると!?


 そうではない。が、のんびり話している間はないッ!


 グリフィーヌの意思が私の疑問を否定するや、私の体は横に流れる。

 空気の壁を破いたその機動は、真下からのエネルギーカノンの狙撃を避けるため。なので私はロルフカリバーを振るって動いた先を狙った砲撃を叩き割る!


 この私の空中機動を、ネガティオンは地面から興味深そうに見上げている。


「ほほう。グリフィーヌの残骸を取り込んで飛行能力を得たというのか?」


「取り込んだとは失礼な! 生まれ変わりと合体だッ!」


 見上げるネガティオンに怒鳴り返したのは、私から出たものだが私の声ではない。グリフィーヌの声が私の機体を通して出ているのだ。


「ほう!? 確かに心臓部を砕いたというのにまさかだな! 甦ったとでもいうのか?」


 ネガティオンは興味津々といった風な問いかけに合わせて連射間隔を狭めてエネルギー弾を放ってくる。

 しかしグリフィーヌの翼を得た私は、翼とスラスターコントロールに専心せずとも思い通りの軌道を描いてこれをかわせた。


「そのようなものだ、かつての我が王よ。貴方の手にかかって全てを砕かれたあの時、ライブリンガーと共にあることで、反転変質しかけていた私のイルネスメタルは、器に新たな力を与えて作り直したのだ!」


 マックスボディのバースストーンを瞬かせてグリフィーヌが言葉を返すなか、私は真正面にきたエネルギーカノンを切り払う。

 なるほどグリフィーヌが言った通り、私の体にはもうひとつ、バースストーンと同質の力を感じる。

 下半身を構成するマキシローリーを中心に、深くダメージを負った私だが、合体したグリフィーヌとの共鳴が、それを補って余りある力を与えてくれている!


「バスタースラッシュッ!!」


 その力を込めて飛ばした破壊竜巻の刃には、稲妻が重なっている。

 雷撃を帯びたエネルギー刃はネガティオンの放った砲撃を一方的に切り裂き、打ち払おうとした鋼魔王の体を呻き声と共に後退りさせる。


「ぬう!? 見誤ったかッ!?」


 しのがれてはしまったが、飛べるようになっただけとの侮りが生んだこの隙はまだ生きている!

 というわけで私は、ネガティオンが姿勢を立て直すのに割り込んでもう一度バスタースラッシュ。

 そのまま距離を取って、上空から斬撃を落とし続けていく。


 立て続けに降り注ぐエネルギーブレードの雨に、さしものネガティオンも結晶の剣だけではさばききれず、装甲にバリアを重ねるようにして身を守る。


 私たちが力を束ねたことで、なんとあのネガティオンを守りに回らせたのだ!


「グゥ……小賢しいわッ!!」


 踏み込んでも刃の届かぬだろう高さと距離。そこからの攻撃に、ネガティオンは苛立ちの声と共に全身からエネルギーを放出。

 濃緑色のこのエネルギーは強固な防殻バリアとなってバスタースラッシュの雨を傘と弾く。

 そして立て続けにバリアと纏ったエネルギーの中でアームカノンをチャージ。ほんの一拍の間をおいて強烈なエネルギー弾が放たれる。

 私たちを狙って空へ駆け昇ってくるそれは、ボール状に圧縮されたケイオスストリームだ。

 ビリビリと迫るその威力を察した私たちは空を走ってその弾道から逃れる。


 そして追尾能力の有無を警戒していた私は、猛然と飛び上がってきたものをとっさにロルフカリバーで受ける。

 鍔迫り合いに重ねた刃を乗り越える勢いで前のめりになっているのは、スラスターを全開に飛び上がってきたネガティオンだ。

 やはりと言うべきか、スラスタージャンプの高度もマックスな私の上を行くとは!


 だがいくら高く跳べたところで……。

 私たちのように飛べるわけではないだろう!


 心の声を合わせた私たちはネガティオンの顔面に強化したプラズマショットを見舞いつつ後ろ飛びに上昇。そして適切な間合いを取りつつ反転、白い鋼の巨体へ突っ込む。


 翼のコントロールは私が請け負う!

 ああ、そちらは本業のグリフィーヌに任せた。そうなれば私が任されるのは当然剣だ!


 こうして心ばかりか機体ボディも一つに重ねた私たちは急降下!

 私の思うコースを滑る様に進んで、ネガティオンが迎撃に繰り出す攻撃の数々をすれ違いに、その勢いのまま自由落下を始めた鋼魔王へクロスブレイドッ!!


「この技、グリフィーヌが得意のッ!?」


 この威力に驚きの声を残して高速落下するネガティオンだが、目を疑ったのはこちらの方だ。私のダメージを補う分でパワーを割かれているとはいえ、急降下機動を読んでケイオスストリームを帯びた剣を合わせてくるとはまさかだ!

 それがクロスブレイドと噛み合って、魔王の機体には届かなかったのだ。


 しかし必殺必勝を期した一撃を防がれたとはいえ、まだ終わってはいない。

 フルメタルの巨体の重量。それを受け止めて弾けた地面が土煙を噴き出すのに目掛けて、雷電を帯びたバスタースラッシュ。同時に背を押す爆炎を尾羽にジグザグ軌道に大地へ。


 案の定に先行させたバスタースラッシュは叩き折られてしまったが、それに続く土煙の中からの迎撃弾は全て私の軌跡を撃ち抜くだけ。


 そして煙幕を突き破り、懐へ潜り込みつつの刀身集束のバスタースラッシュで斬りかかる。


「ネガティオンッ!!」


「ライブリンガーッ!!」


 私の突撃とそれを受け止めた鋼魔王。この衝突が生んだ衝撃波は未だに立ち込めていた土煙を一気に吹き飛ばして視界を晴らす。


 激突の反動による腕から全身に走った痺れ。これが抜けきらぬ間に私は叩きつけたロルフカリバーを翻すとそのまま柄ごと突き出しての竜巻鉄拳。ネガティオンのアームカノンを弾いてそらす。

 さらに間髪おかずに前進して守り嵐の左。

 剣の間合いでなく、ほぼ密着状態からの小刻みな、しかし強烈な嵐と稲妻を帯びた拳打を重ねる。


 ここで主にキャノンをやる左腕にバスターナックルをもう一発。


 これに攻撃の要、その片割れのダメージ蓄積を嫌ってか、ネガティオンがわずかに身を引く。


 この瞬間を……!

 私たちは狙っていたのだッ!!


 このチャンスに、絶好のパワー配分でのスラスターとウイングの後押しを受けての接近。合わせて左腕のシールドストームを全開に鋼魔王の腹に叩き込む!

 名付けて、ストームバッシュだ。


「ぬぐおッ!?」


 この一撃はネガティオンの踏ん張りに打ち勝ち、その機体を高々と空へ。

 ストームホールドの絡みついたままのそれを追いかけて、私は剣を構え一気にスラスターを全開。爆音に打ち上げられるようにして飛ぶ!


 そして二重螺旋と稲妻を帯びた刃がネガティオンに触れる。


「つけあがるなッ!?」


 同時に鋼魔王の怒りをかき消して爆発が。

 ロルフカリバーに込めた力の大きさのためにか、その威力はマキシマムウイングの突撃を跳ね返すほど。


 これにぐるぐると宙を舞ってしまった私だが、グリフィーヌがコントロールを担う翼とスラスターが空中でブレーキをかける。

 そして正面に収めた景色には環を描いたエネルギー流によって球形に縛られた光の塊が。


「やった、のか?」 


 閉じ込められた中で凄まじく渦巻く爆発エネルギーに、私はつい呆然と自分自身に問いかけてしまう。


 あの爆発の中にいるのなら、流石のネガティオンとて無事でいられるとは思えないが……。

 私も自分があの中心だったとして無事でいられる自身は無い……無いのだが、どうしてか討ち取った確信を持てない。

 手応えの違和感か、倒れた姿が確認できていないからか、それともこの状況で言ってはいけない事を言ってしまったような気がするからか?

 そんなバカな。あれだけの力を叩き込んで、無事でいられるはずが……!


 そんな私の不安を思い過ごしだと説くグリフィーヌの意志を遮る形で、エネルギーの塊が爆散する。

 この爆風にマキシマムウイングの私は翼で空中に踏んばりながらも大きく押し流されてしまう。


 そうして爆風を耐えしのいだ私が見たのは、遠く離れていく白い影。翼を備え、角張った先端で大気を貫くのだろう飛行機だ。


「この場は貴様らに花を持たせてやる! あいにくと我にも攻め滅ぼさねばならぬ所があるのでな!」


「あれがネガティオンかッ!?」


 勝ちを譲ってやるとの捨てゼリフを残して瞬く間に小さくなる飛行形態のネガティオン。

 それを追いかけて私たちもスラスターを全開!

 あの方角にあるのはメレテ。獅子像を守りに、そしてネガティオンの前から撤退した仲間たちが向かった場所だ!

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