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勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第三章:三聖獣集結、そして飛翔
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61:剣の戦士の目覚め

「ハッハッハッ! 爆発だッ! ライブリンガーと、裏切り者のくせに充実しつつあるのは爆発だぁッ!!」


 激しさを増す稲光に白黒する視界の中、ウィバーンが高笑いをする。

 自分の勝利を確信してのことだろうこの態度に、私とグリフィーヌはもちろん、二首竜に捕らわれたビブリオたちも口惜しさに拳を握る。


 だがこの状況、詰めの甘いところのあるが頭の回るウィバーンが勝ち誇るだけあって、容易に動けない状況にあるのは確かだ。


 捕まっている我々四名のうち、誰か一人でも欠けてしまえば、それは私たちの敗北に等しいのだから。


 しかし詰みだと諦めてしまえばそこまで。

 幸い我々先発隊に続いて、ガイアベアのラヒノスを連れた後詰のチームが控えている。

 彼らが仕掛ければ勝機が、全員無事の脱出ができるチャンスが転がり込む可能性がある。


 それまで時間を稼ぐにせよ、状況をこじ開ける穴を見つけるにせよ、彼が言うように早々に爆発してしまっては話にならない。

 今はボディを食い破らんばかりに暴れまわり続けるエネルギーを上手く外へ逃がして耐えるしかない。

 グリフィーヌには済まないが、今はこの苦痛に付き合ってもらうしかない。

 そんな意識を持っての目配せに対して、グリフィーヌは問題ないと。苦しみにも負けぬ強い目の輝きで応じてくれる。


「……フンッ! この状況でまた随分としぶとい……いや、往生際の悪いことだな。潔さってものがない」


 そんな私たちのやり取りを見咎めて、ウィバーンは吐き捨てつつ短く笛の音を口に出す。

 魔獣を操るこの音色に、私たちをなぶらせるつもりかと思わず身構える。が、予想に反して指示を受けた魔獣は遠くへ離れていく。

 見張りや港跡地の守りを固めるつもりか、それとも何か取りに行かせたのか。

 しかしウィバーンは、何をさせたのか当ててみればいいさと、調子づきながらも種明かしは焦らしてくる。


 この飛竜参謀の態度にグリフィーヌは舌打ちを。対するウィバーンは逆らえるもんならばやってみろとばかりに煽る。


 この一方で私と同じく打開のチャンスを探していたビブリオが自分たちを捕らえる二首竜を見てハッとなる。

 策を閃いたらしいビブリオは、ホリィと口パクと目配せする。


 この状況を打ち破ろうと何か仕掛けるつもりの友を支援するべく、私はこれを助けるべく、片膝をついて見せる。


「お? さすがの勇者様ももう耐え切れないか? 振り返れば、ずいぶん頑張ってオレたちを手こずらせ続けてくれたモンだからな。いや大したもんだよライブリンガー。実際な」


 上手い芝居ではないが、私が効いてきたのを見せれば、ウィバーンは機嫌を余計に良くして私に注目する。

 これで間合いを詰めるまでに食いついてくれたらあわよくば、と狙ってはいたが、その浮ついた足は踏み出しかけで気づいて戻されてしまった。


「うわぁああッ! トランスファーッ!!」


「なにッ!?」


 そうして私が気を引いていた間に、二首竜の両手が朝焼け色に輝く!

 これにウィバーンが気を取られた隙に、私とグリフィーヌは一息に拘束を引きちぎって駆け出す。

 当然目標は捕まった友人たち。その開放一本だ。


 だが目標ひとつにだけを見てウィバーンの横をすり抜けた私たちを、強烈な鉄砲水が迎え撃った。

 首が押し込まれるかと思うような勢いで叩きつけてくる水。

 これに負けじと私は前へ進もうとスラスターも全開!

 しかしそれが仇となり、濡れた地面に滑って、捻れた推進力が私をあらぬ方向に。


 壁に突っ込み埋まった私に、壁に縛り付けるように網がかかる。

 ウィバーンの投げ放ったらしいそれは、先ほど千切ったものと同じく、強烈なエネルギーを私へ流し込んでくる。


「ふいぃー……まったくやっと捕まえたって一息つくだけでこれだ。少しくらい気の休まる暇をおくれっての」


 ぼやくウィバーンの向こうには、やはり突進の勢いの歪められたグリフィーヌが私と同じように再び縛られてしまっている。


「しかしこの人間のオスメスセットも味なマネをしてくれるもんだぜ。捕まっておいてあんな大胆な真似をしてくれるとは、まったく勇敢なことだな。いや、結局失敗してるからこれは無謀ということか?」


 我々の脱出、救出の失敗を受けて、余裕を崩さずに嘲笑の手拍子を送るウィバーン。

 しかしビブリオもホリィも、手拍子のリズムと合わせて目を点滅させた飛竜参謀のことはまるで耳にも目にも入っておらず、ただ自分達を捕らえ続ける二首竜に愕然とした目を向けている。


「そんな、どうして……二人がけでバースストーンのパワーを注いだのに……」


「なのにどうしてだよ、ガードドラゴッ!?」


 ビブリオが責めるように口にしたのはまさかの名前だった。

 確かに、言われてみればガッチリとしたボディの所々は奪われる前に見たガードドラゴに通じるところがある。

 だが二つの首といい、胸に脈動する毒々しあイルネスメタルといい、いくら乗っ取られているにしてもまさか……。


「ほぉーう、よく見破ったもんだな。いや驚いたよ。大したもんだ」


 しかしなんとウィバーンはビブリオの言葉をあっさりと肯定する。それも心からの称賛を添えてだ。


「いや苦労したんだぞ。コイツをバンガード化させるのには。なにせ聖獣さんたちの心臓部はバースストーンで、俺たちのイルネスメタルとの相性は最悪なんだからな。いやまいったまいった」


 そして問い質すまでもなく、苦労自慢という名のネタばらしが始まる。


「オレが折角復活のために心臓部を補ってやろうって埋め込んだイルネスメタルを、コイツ吐き出すどころか消滅させてくれやがって。サイズで圧倒的に勝ってるので被せてやろうかとも思ったんだが、さすがに湯水のように使わせてもらえるモンじゃないんでな」


 それは分かる。


 私もバースストーンを使ったライブブレスやシンボルのようなアイテムをもっと多く、出来ることなら仲間たち全員に配ってしまいたい。しかし私の中にある結晶体から分裂させているそれは、とてもポンポンゴロゴロと出せるものではない。

 イルネスメタルは私のバースストーンの対になる存在であると言う。ならば同じく分裂可能だとしても、その頻度は多くはないはず。となれば限界がある以上は、青天井に消費してよいとはとても出来ないだろう。

 逆に言えば、これまでの戦いで砕いてきたイルネスメタル。これだけの消費を賄ってしまえるだけの備蓄なり、分裂促進の手段なりが存在することになる。

 これはこれで、うすら寒くなる話だ。


「だったらどうしたと……まさか取り外すか砕くかして、その上で……!?」


「おいおい。流石にそこまで大胆に思いきったことはできないな。それでただの石像か鉄クズしか残らなかったらもったいないだろ。さんざんに苦労させられたんだちょいと惜しいぜソイツはよ」


「じゃあどうやったって言うんだよ。バースストーンがあるのに、ボクらがエネルギーを分けても何も起こらないだなんて……」


「せっかちだなボウズ。だが、特別どうやったってほどの工夫でもないがな。単純にあのまぶしいオレンジの石が邪魔だったから蓋をしてやった。そこにコイツに似せた竜の像のバンガードをくっつけたってワケさ」


 そのタネ明かしを受けて、ガードドラゴのボディに乗った二つの首がしなりうねる。

 新手の鋼魔と報告されていた二首竜が、寄生を受けたガードドラゴだったとは。

 分かってしまった以上、迂闊に退治してしまうわけにはいかなくなってしまった。

 実質、この場の人質が増えてしまったも同然ではないか!


「ハッハハハ! 普通に起きてたら人間側についてた聖獣さんが、オレたちと一緒になって、人間どもの船を沈めて回ってる。コイツは中々に傑作だろ? ハッハハハハハハッ!?」


 ガードドラゴの苦しみを推し量り、それを愉快痛快と笑い飛ばすウィバーン。その悪趣味さに、私は先のチャンスにロルフカリバーを呼び寄せなかったこと。それでもって飛竜参謀を叩き斬ってしまわなかったことを悔やむ。


 そんな気持ちを同じくしたグリフィーヌが、自分の内から湧き出る稲妻で電磁ネットを押し返しつつ立ち上がる。


「……おのれッ! 自分の意のままに、望まぬことを強いてやろうだなどと……ッ!」


「おおっとぉ? お忘れかい。身勝手好きなソロファイターよ」


 しかしウィバーンの目配せを受けてドラゴの手がビブリオたちを締め上げるのに、グリフィーヌはその勢いを押さえさせられる。

 これにウィバーンは満足げに首を繰り返し縦に。


「うんうん。部下だった頃はオレの言うことをひとつも聞かなかったお前が、まあずいぶんとしおらしくなったもんだよな」


「……今に見ていろ……このまま従っているだけの私たちだと思うなよ」


「そりゃあさっきので充分にな。しかし失敗したってのにまだまだ元気じゃあないか……お前ら全員、揃いも揃って」


 一度の失敗でくじける私たちではない。この程度で一人として反骨の意思が揺らぐものか。

 膝を着き囚われても、心は屈していないのを見て取ってか、飛竜参謀はまたつくづく往生際の悪いと呆れたようにこぼす。


「こうなれば仕方がない。もうひとつでかい衝撃でもくれてやらなきゃならんか……」


 何を企んでいる?

 私たちにどのような精神的揺さぶりをかけようと言うのか。

 そんな警戒を揃って胸に抱きつつ、私たちは視線をウィバーンの見上げた空へ。


 するとそこにはメタルでない生の飛竜の足にぶら下げられたロルフカリバーが!


 蹴飛ばすように放られた私の剣は、分厚い刃から地面に落ち、その重みと勢いとで突き刺さる。


「……もっと丁寧に扱ってくれないか?」


 地響きが起きるほどの高さから放り出させる。そんなあんまりにもぞんざいな扱いに、遅ればせの不満を投げる。


「そりゃあ悪かった。今度からはもうちょっと気をつけるよ。今度があったら、の話だけどな」


 しかしウィバーンはそんな私の抗議を適当に流して、地面に突き立ったロルフカリバーへ歩み寄っていく。


「剣を奪おうってつもりか? ムダだよ、勇者の剣が……ロルフカリバーがお前なんかに使えるもんかッ!!」


 その歩みに、ビブリオが無謀と罵り声を浴びせて踏み留まらせる。


「だと思って、へし折ってやるつもりでいたが、リクエストされたらしょうがないよな」


 しかし振り向いたウィバーンの返事は、アイデアをありがとうと、ビブリオの言葉をヤブヘビと強調する皮肉めかしたものであった。


「ネガティオン様が一度叩き折って復活したこの剣、オレもいっちょへし折ってお前らの心も折ってやろうかと思ってたんだが、奪い取ってやった方がダメージがでかいよな」


 言いながらウィバーンはロルフカリバーの柄に手を伸ばす。が、その指先は触れるよりも早く赤く色づくほどに熱を帯びる。

 瞬時に赤熱化するほどの熱量に、ウィバーンは悲鳴を上げて手を引く。


 その様に私は安堵の息をつき、ビブリオは口許を緩める。


「やっぱりね! お前じゃ引き抜くどころか柄に触らせてももらえやしないよ!」


 ビブリオがそれ見たことかと無謀を揶揄するのに、ウィバーンはギラリと眼光を溢れさせて睨み返す。

 が、熱くなった頭を手と一緒に冷やすと、あるものを取り出す。

 それは案の定毒々しい緑色をした金属塊。イルネスメタルだ。


「正直抵抗の強さがここまでとは予想以上だったが、そう言うことならドラゴにやったようにやればいいだけなんだよな」


 ウィバーンは言いながら、イルネスメタルを持つ逆の手に銃型のツールを握り、トリガー。

 その先端から放たれたものがロルフカリバーの鍔にべたりと絡みつく。

 束の間に凝固したそれのせいで、バースストーンを収めた狼の浮き彫りは完全に覆い隠されてしまった。

 なるほどこれがガードドラゴにも使った、乗っ取りをかけるイルネスメタルとの緩衝材、バースストーンの封印だというワケか。

 と、大人しく見ている場合ではないぞ、これは!?


「戻れ、ロルフカリバーッ!!」


「一手遅いぞ!? ハハハッ」


 送還。それでもって乗っ取りの危機から離脱させようと私は叫ぶ。

 しかしトリモチ弾を撃つのとほぼ同時に突き出されていたウィバーンのイルネスメタルを持つ手はすでにロルフカリバーに触れるか触れぬかというところにまで迫って――!


「ハ……ハァッ!?」


 しかし次の瞬間、ウィバーンのイルネスメタルの押し付けは空を切る。

 目当てのロルフカリバーはどこへ。と、飛竜参謀が視線をさまよわせる。するとその標的を無くしたままに伸びた腕を、分厚い鋼が殴りつけた!


「グ、ガァアアッ!?」


 分厚い刃を受けたウィバーンの腕が、関節でない箇所から鈍い音を立てて折れ曲がる。その拍子に開いた手からイルネスメタルが零れ落ちる。


 回避からの痛烈な反撃。それを成してウィバーンの腕の食い込むのはロルフカリバーだ。

 私の声を受けたから……ではなく、ひとりでに危機を察して動いたのだ。


 ウィバーンはそうして腕にかみついた剣をにらみ、掴みかかる。


「……ッ!? この、剣というものはなぁ! 使い手に振り回されていればいいんだってのにッ!!」


「ダメだ! もってけぇえッ!!」


「私の分もッ!」


 これをチャンスのままに、ピンチにしてはダメだと、ビブリオとホリィが譲渡用の魔力を発射。私も一拍遅れに続いてロルフカリーを支援するエネルギーを放つ。

 私たち三人分のエネルギーを受け取ったロルフカリバーはウィバーンの腕に食いついたまま太陽のように輝く。


 至近距離で爆発した夜明けの輝きに、睨みつけていたウィバーンは堪らず悲鳴を上げてのけ反る。


 目が眩んで意趣返しどころでなくなった飛竜参謀。その腕からロルフカリバーは宙返りに離脱。同時に巨大化を始める。

 そのままマックス仕様のサイズにまで膨らみつつ、固まった鳥もちを内側から砕いて吹き飛ばす。


「ゥウォオオ……アォオオーンッ!!」


 そして遠吠えのような声に続いて柄と鍔まで割れ始めた!?

 吠える狼の浮き彫りを中心に分割・展開し、鍔が肩から腕を、握りが腰から下を形作る。

 デフォルメの効いた人型を作った柄は刀身を射出。その下からウルフヘルムの頭を突き出して、合体していない私からしても小柄なボディを完成させる。


「拙者を操り、殿らに仇なさせようだなどと、許せるかッ!!」


 そして叫ぶや射出した剣を腕の振りで操作。瞬く間に私とグリフィーヌを縛る電磁網を断ち切り、ビブリオたちを掴んだ二首竜の腕をぶん殴る。


 この威力に投げ出されたビブリオたちを滑り込んでキャッチ。


「殿! 今ッ!!」


「ああ! 任せてくれッ!!」


 人型へチェンジしたロルフカリバーの声を受け、私も自由になったボディをスラスター全開に突撃!

 その勢いを乗せた鉄拳とスパイクシューターをウィバーンに叩き込む!


「ぐあッ!? クッソ、なんでこうなる……なんでッ!?」


 人質を取ってこちらの自由を奪うというお膳立てをしておきながら、予想外の増援にあっさりとひっくり返されたこの事態に悪態をこぼしながら、ウィバーンは私の打撃に乗って空高くへ。


 それを追いかけてロルフカリバーは遠隔操作中の刃を投げつける。

 これをかわしたウィバーンはエネルギー弾を降らして反撃を。

 その途中、遠くに何かを見つけたのかある一点を見つめて動きを止める。


「グリフィーヌ、頼めるかッ!?」


「ああ、任されたッ!!」


 その隙を突くように飛翔能力持ちの頼もしいのに声をかければ、グリフィーヌはその翼を広げてくれる。


「チィッ……ッ! 事こうなったらやってられるかッ! ドラゴッ!!」


 完全に逆襲態勢の私たちの声を受けたウィバーンは翼をひるがえして撤退。

 あっという間に空の彼方の麦粒になってしまったそれを追いかけようとグリフィーヌが変形しつつ飛び立つ。

 しかしその嘴を掠める砲撃が。


 グリフィーヌの飛翔を阻んだのは、巨大な蛇型の魔獣だ。

 尾の側にも頭を生やした双頭の蛇は、空のグリフィーヌを目掛けて代わる代わるに火の玉を吐き出す。

 そうして牽制を続けるその体は金属に覆われていて、イルネスメタルによる強化を受けているようだ。恐らくは先ほど取り落としたヤツ。あれを手近な魔獣だった双頭蛇に取り付かせたか。


「マキシローラーッ! マキシローリーッ!」


 これを放置しては置けないと、私はその二つの頭上へマックスボディを構成する巨大ビークルを降らせる。

 町の跡が揺らぎ崩れるほどのこの衝撃に、ダブルヘッドの蛇も沈黙する。

 しかし邪魔者を黙らせさあ追跡だといこうにも、ウィバーンも乗っ取られたガードドラゴも、すでに影も形もない。


「まったく、相変わらず逃げ足が早いんだからなッ!」


 蛇のバンガードを殿にして逃げおおせた飛竜参謀の逃げ足に、ビブリオが地面を蹴とばしてぼやく。

 その直後、ビブリオの足元で地面が盛り上がる。


「危ないッ!?」


 これに私は、ホリィがビブリオを抱えて展開したバリア魔法ごと二人を抱えて横っ飛びに。

 その私の腹をかち上げる形で地面から飛び出すものがある。

 それは鱗を金属でコーティングした蛇の頭。モグラ型の魔獣をくわえたもうひとつの蛇の頭だ!

 この衝撃に吹き飛び、放物線を描く私に、別の地点から飛び出した蛇の頭が食いつきに。

 モグラを食べたせいか、明らかに先程よりサイズを増したその頭は、食いつくどころか、私をビブリオたちもろともに丸のみに出来てしまいそうな勢いで。

 しかしそんな大きすぎる蛇の横っ面を、大きな炎が殴りつけ、分厚い刃がさらに畳み掛ける。

 ロルフカリバーが握って叩き込んだ刀身は、メタルの鱗を叩き割るばかりか、頭蓋骨を半ばまで割って食い込む。

 そのままダメ押しとばかりに大蛇の頭を地面に叩きつけに。

 その間に、私はスラスターを小刻みに噴かして着地。するとそこへマッシュ隊の皆を乗せたラヒノスが迎えるように駆け寄ってくる。


「すまないな。遅くなった」


「いや、いいタイミングだったよ。ありがとう」


 隊の息を合わせての合体火炎魔法での援護にお礼を言いつつ、私はビブリオたちをラヒノスの背中へ。

 それに遅れて自分の刀身に乗っかったロルフカリバーが宙返りに跳んでくる。


 直後、今度はトカゲ型の魔獣を丸のみにしつつある大蛇頭と、かち割られた前半分を再生しつつあるもうひとつの頭が鎌首をもたげる。

 なるほど、もう一匹同じのがいたとか、三つ目四つ目の首があったのではなく、単純に潰れたのを再生させてきているというわけか。


「あれは首を飛ばしても再生して、魔獣を食べて回復促進と巨大化をしてくる。ラヒノスたちは少し下がって援護を頼む」


「了解。それならアイツの餌になるのを近場から追っ払う感じのがいいな」


「それはありがたい。是非お願いしたいな」


「おうとも。こっちは任せてくれよ。その代わりに、デカブツ退治はバッチリ決めてくれよ?」


「ああもちろんだ。任せてくれ!」


 マッシュの頼もしい提案に私たちはうなずきあって、それぞれの分担に向かう。

 私が対峙するのはもちろん、強力強大に育った双頭蛇のバンガードだ。

 だが、いくら大きくなろうともそれほど苦労はないだろう。


「ではこれ以上に余計な被害を出さないように、手早く片付けてしまおうか」


「うむ。承知した」


「殿の御心のままに」


 並び立ち、両脇を固めてくれる仲間たちにうなずき返して、私はマックス形態へ合体ライズアップするのであった。

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